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2016年9月15日 第594号

東借連連続学習会第2回「明渡しと正当事由」
東借連常任弁護団瀬川宏貴弁護士が講演

正当事由は借地借家法の根幹
耐震性不足は家主側に立証責任が

第2回の連続学習会で挨拶する佐藤会長
第2回の連続学習会で挨拶する佐藤会長

 東借連連続学習会の第2回は、9月4日午後1時30分から武蔵野市の武蔵野公会堂で38名の組合員・組合役員が参加して開催された。
 多摩借組の川合副組合長の司会で学習会は進行し、東借連の佐藤会長が開会の挨拶で「来年の3月に東借連は創立50周年の定期総会を迎える。今年は組合員が参加する組合活動ということで3回の連続学習会を地元の組合員が参加しやすいように地域を替えて行っている」と訴えた。
 学習会は、東借連常任弁護団の瀬川宏貴弁護士より「明渡しと正当事由」というテーマで、プロジェクターを使って1時間にわたり講演が行われた。
 瀬川弁護士は、民法では契約自由の原則で借主に不利な契約を結ばせることになり、民法を修正し、借主を保護する法律として借地法借家法が1920年に制定されたことを説明した。借地借家法では、賃貸借契約の終了に正当な理由が要求され、明渡しを求める貸主の言い分が裁判所に認められないと契約は終了しない。正当事由は借地借家法の借主保護の根幹部分となっている。
 次に、契約の終了のパターンで正当事由が要求される場面について説明し、借地契約が期間満了で地主が更新拒絶(異議を述べる)をするには正当事由が必要で、借家契約の場合には正当事由と同時に契約終了日の1年前から6か月前までの間に更新拒絶を行うことが必要であると指摘した。

講演する瀬川宏貴弁護士
講演する瀬川宏貴弁護士

 正当事由の判断としては、借地借家法第6条・28条では、(1)土地・建物の賃貸人及び賃借人がそれぞれ土地・建物を必要とする事情、(2)土地・建物の賃貸借に関する従前の経過、(3)土地・建物の利用状況・現況、(4)財産上の給付(立退料)と規定している。4つの事情のうち、最も重要なのは(1)の事情で、(4)は補充的事情とされる。いくら立退料が積まれても、(1)~(3)の事情が裁判官に認められないと明渡しは認められない。
 立退料については、明確な基準はなく、事案によって様々だが、アパートやマンションの場合には家賃の1年分から2年分が多い。家主側に正当事由がなければ家賃2年分から上乗せする事例もあると指摘した。
 耐震性不足を理由に借家の明渡しを求めるケースが増えているが、耐震性不足を家主側で立証できないと正当事由とは認められない。最近は耐震性不足を口実にする貸主や代理人が多く、立証するのは大変であり、安易に立退きに応じる必要はないと強調した。
 講演後、参加者から活発な質疑応答があり、最後に細谷事務局長が閉会の挨拶を行い、次回の学習会の参加を訴えた。


地主親子二代続け不当請求
足立区西新井大師商店街の河野さん

明渡し更新料 裁判で請求棄却
今後は高額地代の減額請求検討

西新井大師山門の商店街
西新井大師山門の商店街

 関東厄除け三大師の一つ真言宗豊山派の「西新井大師」は古くから「関東の高野山」とも呼ばれ正式名称は五智山遍照院総持寺である。その山門近くで30坪の宅地を賃借し、商いをしている河野さん(仮名)は今後のこともあり、高額な地代の減額を考えている。
 地主は河野さんに対し昭和59年11月に法定更新後、建物収去土地明渡し請求の訴訟を起こし敗訴した。平成4年に店を改築した2年後の平成6年には更新料支払いの訴訟を東京地裁に申し立ててきたが、河野さんは組合の田中弁護士に委任して闘い、更新料支払い請求は棄却された。
 地主が死亡すると、今度は相続した息子が平成17年に「更新料支払いと地代供託金は損害金として受領する」旨の内容証明郵便を送付。直ちに「損害金ではなく賃料として供託する」旨の内容証明郵便を送った。その後動きはなく、河野さんは高額な地代を供託してきた。昨年4月に地主は内容証明郵便で「法定更新は認めない。契約は終了し、約11年分の供託金は損害金として受領した」旨の通知を寄越してきた。河野さんは本年8月に事務所を訪問した際、将来も子供に坪当り2300円の高額な地代を支払わせることはできないと地代減額請求を弁護士と相談することにした。


組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 10月18日(火)・19日(水)午前11時~午後5時(午後1時~2時昼食休憩)まで、池袋西武百貨店7階くらしの相談コーナー。連絡・(3982)7654。
■多摩借組「定例法律相談会」
 10月1日(土)午後1時30分から組合事務所。相談者要予約。
 「借地借家問題市民セミナー」
 10月22日(土)午後1時30分からルミエール府中(市民会館)。連絡・042(526)1094。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から組合事務所。連絡・(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。相談者要予約。連絡・(3801)8697。
■大田借組「借地借家
 法学習会」
 9月24日(土)午後1時30分から大田区消費者生活センター(JR蒲田駅東口徒歩5分)。講師東部法律事務所の西田穣弁護士。定員40名。連絡・(3735)8481。
■東借連「常任弁護団会議」
 9月27日(火)午後6時30分から城北法律事務所。連絡・(3982)7277。