東京借地借家人新聞 top トップへ 前のページへ
2010年11月15日 第524号

家賃補助実現で住宅政策転換を

2010年 住宅研究・交流集会 開催
全ての住宅困窮者に公営住宅水準の居住を実現させよう!

10・30集会で報告する坂庭住まい連代表幹事
10・30集会で報告する坂庭住まい連代表幹事

 2010年住宅研究・交流集会が10月30日午前10時から全水道会館において開催された。開催団体は、日本住宅会議・国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)、住まいの貧困に取り組むネットワークの3団体で、当日は台風の接近という悪天の中、82名が参加した。
 主催者を代表して坂庭国晴住まい連代表幹事が開会の挨拶と「家賃補助、公的保証の実現と居住セーフティネットの確立をめざす提言」と題する基調報告を行なった。

家賃補助実現等2つの提言

分散会で討論する集会参加者
分散会で討論する集会参加者

 坂庭氏は今回の提言の基本的な考え方について「新たな貧困と格差が拡大する今日、基本的人権である居住の権利を国と自治体が責任を持って保障することが急務となっている。すべての住宅困窮者に公営住宅水準の居住を実現することである」と訴え、2つの提言「提言1民間賃貸住宅における住宅手当の拡充、公的保証の確立、家賃補助の実施」と「提言2公的賃貸住宅における家賃補助制度と居住セーフティネットの確立」が説明された。
 なお、今国会で審議される追い出し屋規制法案について今年2月に国交省が確認案から国会提出法案では「公的賃貸住宅の供給促進」が抜け落ちている等の問題点が指摘された。
 次のシンポジウムでは追い出し屋被害に会ったシングルマザーや外国人、派遣切りにあった青年を支援する労組の役員等から実態報告があり、塩崎賢明・日本住宅会議理事長(神戸大学教授)、稲葉剛・住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人より提言を補足する発言があった。
 午後は4つの分散会に分かれ提言について活発な討論がされ、最後の全体会では鈴木浩・日本住宅会議理事より討論のまとめが行なわれた。


更新料で頑張ってる

大田区新蒲田のFさん
生活を守るためには地主と正面から立ち向う決意必要

 大田区新蒲田地域に宅地約35坪賃借しているFさんは、平成22年6月の契約更新を控えて今年1月組合に入会した。
 前回は高額な更新料も地主とのトラブルを避けたいと払ったが、今は年金生活で日々の生活に追われている状況の中で、地主の更新料請求にどう対処するかとの相談だった。
 更新料は法律上支払い義務はなく、最高裁判所も借地人に地主の更新料請求に応じて支払う必要性はないと判決していると相談に対する回答は明確だ。問題は地主とのトラブルを避けるために支払うか、自らの生活を守るために地主と正面から立ち向かうかの決意が大切と伝える。
 Fさんは6カ月前払いの地代を6月中旬に持参し、12月分まで受領された後に、地主の口頭による更新料請求に対し、すでに法定更新されて更新期日後の地代も受領され、経済的にも更新料は支払えないことを内容証明郵便で通告した。1カ月後地主代理人の弁護士より内容証明郵便にて「契約期限後の受領した地代は返還するので更新料を支払へ」との通告だったが、地主からの返還はなかった。
 Fさんは、年末に地代を持参し、受領拒否されたら供託して、権利を主張して頑張る決意を固めている。


借地借家相談室
ペット可の契約で入居したがペットの損耗修復費の支払いは必要なのか

(問)「ペット飼育」が許可されたマンションで、入居時から2年間猫を飼っていた。先月そこを退去したが、敷金が全く還ってこない。理由を尋ねると、「猫による室内の破損・汚損が多数あり、それらの原状回復費用として敷金から控除したので、返還する敷金はない」と回答してきた。
 「ペット可」のマンションにおいて、飼育による費用負担の特約も無いのに原状回復費用は借主の負担になるのか。

(答)原状回復費用に関して大多数の判例は、「建物賃貸借において、賃借人が退去の際に負担する原状回復費用は、賃借人の故意・過失による建物の毀損や通常を超える使用による損耗等については賃借人が負担する」という見解である。賃借人の「原状回復義務には、特約のない限り、通常損耗に係るものは含まれず、その補修費用は、賃貸人が負担すべきである」(最高裁平成17年12月16日判決)。ペット飼育による一般的に生ずる破損・汚損については、「通常損耗」と言えるので、ペット飼育による費用負担に関する特段の定めがない限り、修復費用は賃貸人の負担となる。では「特段の定め」とはどのような特約をいうのか。例えば、(1)「ペット消毒」特約を定めた事例では、脱臭処理の「クリーニング」(5万円)を原状回復費として認めた(東京簡裁平成14年9月27日判決)。(2)退去時の美装工事を定めた特約の事例では、猫の飼育による室内の脱臭処理費(2万5000円)を原状回復費用として認めた(京都簡裁平成16年7月1日判決)。特段の定めが無い場合は、最高裁が指摘するように、「賃貸物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませて支払いを受けることにより行われる」(前記最高裁判決)。このように、「ペット可」を謳う賃貸マンションの場合、ペット飼育による通常損耗による原状回復費用は、賃料の中に織り込まれているのが一般的であり、修復費用を賃借人が支払うことは不当な家賃の二重払いになる。結論、「ペット可」の賃借物件の場合、通常のペット飼育に関係する破損・汚損は原状回復の対象にならないので、修復費用を借主が負担する義務はない。


組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 12月15日(水)・16日(木)午前11時~午後5時(午後1時~2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 12月17日(金)午後2時から組合事務所。相談者要予約。
 連絡・(3982)7654。
■多摩借組「定例法律相談」
 12月4日(土)午後1時30分から組合事務所。要予約。
 「更新料問題学習会」
 11月19日(金)午後6時30分から立川市柴崎学習館(JR立川駅南口、多摩都市モノレール立川南駅より8分)。連絡・042(526)1094。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から大島総合区民センター。
 「第42回定期総会」
 11月28日(日)午前10時から大島総合区民センターで。昼から別会場で懇親会。
 連絡・(3640)4694。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。連絡(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。相談者は要予約。
 連絡・(3801)8697。
■北借組「法律相談」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。
 連絡・(3908)7270。
■世田谷借組「相談会」
 毎月23日午後2時~7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■大田借組 「旅行会」
 11月14日(日)・15日(月)の1泊二日。浜中湖舘山寺温泉。
 連絡・(3735)8481。