2025年7月15日 第663号
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講演する東借連常任弁護団の種田和敏弁護士 |
東借連春季研修会は、5月18日の午後1時半から豊島区内で開催され、組合員22名が参加した。細谷会長が開会挨拶を行い、高橋事務局長が司会を担当した。講師は東借連常任弁護団の種田和敏弁護士が「賃料増額請求があったら」というテーマで、具体的に大家や地主から値上げを請求された時の賃借人の対応について講演した。
まず前提として、値上げの請求を断っても、契約を解除されることはなく、貸主は更新しないと言っても、借地借家法では更新をしない正当事由がなければ、強制的に契約を更新してしまう制度がある(法定更新)と指摘した。
また、賃料の変更には合意が必要であり、合意が成立しなければ、これまでの賃料が契約金額なので、これまでの賃料を払い続ければよい。賃料を受け取らないと言われたら、法務局に供託をする。賃料増額請求を断ったら、次はどうなるのか。値上げができない場合もあるが、調停や裁判(訴訟)になる場合がある。調停とは、調停で解決しないと次は、そのまま何もなく終わるか、裁判になる。裁判では増額されるかについては、この15年地価は上昇傾向なので、増額は不可避である。地代だと、1・1倍に抑えられればラッキーである。1・2倍~1・3倍は覚悟して、運が悪いと1・4倍、最悪で1・5倍になるケースもある。家賃はもっと上がる場合もある。
貸主は、固定資産税が上がったから、増額されると言っている。固定資産税が上がったら、増額されるのか。この問に対して、種田弁護士は「それほど単純な話ではない」、借地借家法では、増額請求の理由を定めている。裁判になり、裁判所が賃料を変更するのは「事情変更」があった時である。事情変更があったかは、今の賃料が決まった時(直近合意時)と増額請求時の固定資産税や不動産の価格などを比較する。その金額が判決額になる。
不動産鑑定基準の継続賃料の鑑定手法について簡単に説明し、休憩を挟んで参加者から賃料増額をめぐって活発な質問が出され、大変有意義な学習会となった。
老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部改正する法律案が自民・公明・立憲・国民・維新などの賛成(共産・れいわ他反対)で先の通常国会で成立した。
最大の問題が、賃借権の終了請求制度の創設である。マンションの建替え決議の成立のみで、6カ月の猶予をもって、用対連基準の通損補償をすれば、賃借権は消滅し、マンションで居住・営業する賃借人は立ち退かされることである。
自由法曹団(団長岩田研二郎)は6月12日に抗議声明を発表した。賃借権終了制度の創設に関して「借地借家法が保護する賃貸借契約が継続する権利を剥奪するものである。賃借人は、建替え決議に際して議決権を行使できないため、自ら関与できない手続きによって、一方的に賃借権の消滅を甘受しなければならない」として、借家権者・区分所有者の権利を守る法運用を求めると表明している。と
衆議院国土交通委員会の審議でも、日本共産党の堀川あきこ衆議院議員が賃借権消滅請求権を創設する理由について質問している。竹内政府参考人は、建替え決議に反対する区分所有者も売り渡し請求がされ区分所有権を失うので、建替え決議があった場合に一定の補償の下で賃借権を終了されることは許容されると答弁している。お金のない区分所有者は建替え決議の成立で賃借人同様に退去を強いられるなど、住まいの安定確保が不十分な法律である。