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【判決紹介】借主にタトゥーがあることを理由に賃貸物件の引渡しを拒めるか

Q ある人が、家族で住むために、建物を借りました。賃料は月額約55万円で、契約期間は2年間となっていました。契約を締結した後、借主にタトゥーが入っていることが分かりました。家主は、借主が反社会的勢力の人物であると疑い、鍵を引き渡しませんでした。このような対応は認められるでしょうか。

A 東京地方裁判所令和4年10月12日判決は、これを認めませんでした。
 (1)まず、家主は、タトゥーが入っているような人だったら貸さなかった(要は錯誤があったので取り消す)と言うけれども、契約条項にも反社会的勢力と疑われるような人物を排除するような規定はないし、家主自身も確認する対応をとっていない。また、借主も、そんな疑いがあるだけで家を借りられないなんて思っていなかったことから、錯誤による取消しは否定しました。
 (2)次に、タトゥーを入れることを禁止するような条項はないし、タトゥーがある居住者がいると建物の価値が下がるというけど、それは根拠のない主張であるとしました。
 (3)最後に、借主にはタトゥーが入っていることを言う義務があったというけれども、一般にそんな義務は認められないし、他の住人がタトゥーを怖がることもあり得るだろうけど、配慮の方法は色々あるのだから、ことさら言う義務があったとは認められないとしました。

◎評価
 暴力団や半グレなど、実際の犯罪組織は対処すべきですが、見た目が怖い、そんな理由だけで家を借りられないということはあってはなりません。裁判例がいうとおり
根拠のないものだし、 住民としての生活方法はいろいろ工夫できます。
 似たような話に、外国人は家を汚すという偏見に基づいて、家を貸さないというものがあります。今回の裁判例は、契約を結んだ後のことですが、そもそも契約を結ばないという方法で偏見に基づいた排除を実施できるのが現状です。家は重要な生活インフラです。この点に配慮した借地借家政策が必要とされています。

(弁護士 金思明)