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| 祐成東京大教授 |
第44回全国クレサラ生活再建問題被害者交流集会の第6分科会が11月1日午後1時30分からオンラインで開催されました。主管は生活弱者の住み続ける対策会議と全国追い出し屋対策会議。
第6分科会では、祐成保志・東京大学大学院教授を講師にお招きして、「住宅政策はどこへ向かうのか―政策の動向と課題」と題して基調講演が行われました。
住まい政策は社会保障か?
講演では、高齢者の居住に関する政府の政策文書に基づいて、1980年代以降の日本の社会保障の構想における住宅の位置づけがどう変化しているかを概観しています。住宅は「福祉国家のぐらいついた柱」と言われ、戦後から高度成長期にかけて、住宅政策と社会保障の関係は希薄で、現在も住宅に対する社会支出は少ない(図)。
しかし、岸田内閣が2022年12月の全世代型社会保障構築会議の報告書では、「住まい政策を社会保障の重要な課題として位置づけ、そのために必要となる施策を本格的に展開すべき」と提言しました。
日本が高齢化社会となった1970年代、住宅政策の対象を家族世帯のための住宅に限定されていました。1990年代半ば、社会保障制度と住宅政策の大幅な見直しが並行して行われ、家族による介護負担を社会化するための制度の検討が行われ、介護保険制度が2000年に施行されました。
民間による住宅供給が基本
1995年の社会保障制度審議会勧告で、従来の住宅政策が住宅の量的な拡大ばかりを追い求め、住み続けるために何が必要かという点に十分な注意を払ってこなかったことを批判し、住み慣れた家を在宅福祉の受け皿とするために、改造費補助や家賃補助による公的助成を行う必要性が指摘されました。同年の住宅宅地審議会答申では、安定した居住のためには、物的な条件だけでなく福祉サービスの利用が欠かせないため、住宅政策と福祉政策の連携を求めています。
2005年の審議会答申では住宅建設5ケ年計画に代わり政府の役割を市場の条件整備に限定し、民間による住宅供給を基本とし、市場で住宅にアクセスすることが困難な人に対するセーフティネットを用意するとする方向性が示されました。2007年に住宅セーフティネット法が制定され、国と地方自治体に、住宅確保要配慮者の入居を困難にする社会的障壁を取り除くための施策を講ずるよう求めました。しかし、同法では05年答申が提案した家賃補助など入居者の経済的負担を軽減する措置は導入されませんでした。
世論の支持が低い住宅政策
1990年代に「介護の社会化」をある程度達成した日本社会は、現在「居住支援の社会化」という課題に直面しています。しかし、住宅政策から居住支援への転換は、国民の幅広いコンセンサスと十分な財政的基盤のないまま進められています。住宅手当(公的家賃補助)は極めて限定的で、家主や支援団体への補助金も微弱である。民間賃貸住宅の居住者だけでなく、持家居住者の間でもこの問題が意識されない限り、状況は変化しないのではないか。単身高齢者が増える中で「身寄り問題」への注目が高まることによって、居住支援の社会化の世論が高まるのではないかと指摘しました。
モノ対象から人対象政策へ
まとめとして、安定した住まいの確保の実現には、住まいというモノを対象とする経済・産業中心の政策だけではなく、居住する人を対象とした政策を包含する枠組みが不可欠である。家族、雇用主、近隣コミュニティの弱体化により、居住の確保は私的な課題から公共的な課題に変化しつつある。居住保障の観点に立脚することで、住まいにかかわる政策は、インフラ整備にとどまらず、社会保障の中に位置づけられるはずである。
現行住生活基本計画は、住宅市場の優先と住宅セーフティネットの強化との本質的な矛盾、さらには、「商品としての住宅」と「社会権としての住宅」との間の根本的な対立についての検討が欠けている。居住は私事主義が根強く浸透した政策領域であり、転換には抵抗が予想される。家賃補助については財政支出を懸念し、政府内に厳しい抵抗があり、世論の高まりが必要と指摘しました。 |