法務省民事局は「借地借家法の更新拒絶等要件に関する調査研究報告書」を発表しました。研究者の監修の元、令和年間(令和元年〜令和6年)の借家関係の裁判例137件を調査しています。
正当事由の具備が理由を問わず認められ明渡しを認めた裁判例が約53・5%でした。考慮要素の分析結果について、賃貸人側の事情として、「建て替えの必要性」、「有効活用」、「明渡し後の具体的計画の有無」が考慮要素とされています。とくに、老朽化を争点とする事件では、建替えの必要性として正当事由を認める裁判例が平成16年約55%から約71%と増加しています。
賃借人側の事情では、「建物の使用期間」では居住期間が長いことが正当事由の消極的要素となる得るとされています。また、「物件の代替可能性(賃借人が使用する必要性)」、賃借人が高齢で引っ越し等に支障がある場合には正当事由が認められない要素になります。
正当事由の補完的要素として「立退料」の支払いが双方の事情を考慮した上で、金額により調整されています。賃借人に有利な事情があっても、立退料の支払いを補完が可能な要素とされ、立ち退きを認める傾向が強くなるなど、正当事由が形骸化されようとしています。 |