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東京借地借家人新聞


2010年8月15日
第521号

住宅政策転換の提言学習会

9月11日 塩崎賢明神戸大教授が講演

全ての人に居住保障を

好評「住宅政策の転換」パンフ発売中

日本住宅会議等3団体が発行したパンフレット
日本住宅会議等3団体が発行したパンフレット

 今年の4月16日に衆議院の議員会館で行われた「住宅政策の転換をめざす国会集会」で、内閣府参与の湯浅誠氏の講演「公設派遣村の教訓と住宅政策・住宅運動に望むもの」と日本住宅会議理事長の塩崎賢明神戸大学教授が発表した提言「今こそ住宅政策の転換を」が一冊のパンフレットにまとめられた。
 東借連では、住宅政策転換パンフ(1冊300円)の普及とともに、湯浅誠氏が講演の中で強調した「住宅問題を表のテーマにしていく」ことのよって社会問題として認識させるために、住宅政策の転換を求めるパンフレットの学習をよびかけている。
 全借連と東借連では、9月11日(土)午後1時半から豊島区東部区民事務所(JR大塚駅北口徒歩7分)において、塩崎賢明神戸大学教授を講師に迎え、「提言・今こそ住宅政策の転換を学ぶ」をテーマに学習会を開催する。
 日本の住宅政策は戦後一貫して景気浮揚策としての持家中心の自力建設を行なってきた。公営住宅をはじめとする公的施策住宅の割合はわずか6〜7%という低い水準に置かれ、民間の賃貸住宅は高家賃で劣悪な状態の居住環境の下で、借地借家人は様々な賃貸トラブルにまきこまれている。学習会では今日の住宅問題の原因を明らかにし、抜本的な転換策を学習する。(参加申込みは東借連事務所)




 

地代値上げで頑張ってる

文京区関口の東山さん

3・8倍の異常値上げ

拒否すると値上げの調停に

 

東山さんが住む文京区関口附近
東山さんが住む文京区関口附近

 文京区関口に住む東山(仮名)さんは親の代から借地し、階下を事務所や倉庫として貸し、階上に住んでいる。都心ということもあり、バブルの頃は地上げ屋に追い出しを迫られたりしたが、頑張って借地していた。数年前に、ある不動産会社が底地を地主から買い取り、出ていくか買い取るかという話もあったが、金額で話にならず、そのままとなった。今年に入り、地代の値上げを請求をされた。坪当り1300円を5000円にせよという請求であった。多少の値上げならば検討してもよいと考えていたが今回の請求は到底認めることができない。拒否したところ調停をおこされた。地主は埼玉の不動産鑑定士の鑑定を調停の場に提出し、この鑑定をベースに話をすすめようとしたが、借地人側は、共同で近隣の借地人から地代の額を聞き取り坪当り概ね1000円から千数百円の結果を出すと調停委員もびっくりし、話は振り出しに戻った。東山さんは今後とも、裁判も辞さずと頑張る決意を語っていた。




 

組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 9月15日(水)・16日(木)午前11時〜午後5時(午後1時〜2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 9月17日(金)午後2時から組合事務所。相談者要予約。
 連絡・(3982)7654。
■多摩借組「借地借家問題市民セミナー」
 10月16日(土)午後1時30分からルミエール府中参加無料。
 連絡・042(526)1094。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から大島総合区民センター。
 連絡・(3640)4694。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。
 連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。
 連絡・(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。相談者は要予約。
 連絡・(3801)8697。
■北借組「法律相談」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。
 連絡・(3908)7270。




【判例紹介】

土地明渡請求が高額な立退料提供でも正当事由が認められなかった事例

 土地賃貸借期間満了に伴う建物収去土地明け渡し請求について、賃貸人の自己使用のためのビル建築計画があり、更地価格の約83パーセントに相当する立退料が提供されたにもかかわらず、正当事由が認められなかった事例(東京高裁平成4年6月24日判決)
【事案の概要】
 Y(賃借人)は、昭和23年に、本件土地上にある借地権付き建物を購入し、当時の地主から本件土地を賃借することになった。その後、賃貸人は本件土地の譲渡や相続にともない転々と変更し、X会社が昭和62年に本件土地を譲り受け、賃貸人の地位を承継した。本件賃貸借契約は昭和43年8月に約定期間20年として更新され、そして昭和63年8月に期間が満了した。
 X会社は前賃貸人の債務を保証していた。その保証債務を支払ったため、前賃貸人はX会社に本件土地を譲渡(代物弁済)した。本件土地の賃貸人となったX会社は本件賃貸借契約が期間満了となる前に、更新を拒絶する旨をYに通知した。X会社は他のビルを賃借していたが、同ビルの明け渡しを求められており、本件土地に自社ビルの建築を予定していた。他方、Yは昭和23年に本件土地を賃借して以来約40年、同所で靴の販売店を妻、子供の3人で営んでおり、既に高齢であった。所有建物は木造二階建で昭和33年頃改築したもののかなり老朽化していた。本件土地は都心の商業地に所在し防火地域に指定されていたため建て直す際は耐火建築物にしなければならないところ、Yにはその計画はなかった(注:本件では元賃貸人との間で堅固建物の建築を認められていた事情がある。)。Xは、Yに賃貸借契約の更新拒絶にあたり、更地価格の83パーセントの立退料を提供した。
【判旨】
 Xが本件土地を自己使用する必要性は一応認められる。また、本件建物がかなり老朽化した木造建物であるうえ、本件土地は都心の商業地域で、防火地域内にあるから、ビル建築が適切とも思われる。しかし、Xは本件土地に賃借権があることを知りつつ本件土地を取得したこと、本件土地に自社ビルを建築することになったのは前賃貸人の債務を肩代わりしたことから偶然入手したものであるから、Xの本件土地使用の必要性はそれほど強くない。他方、Yは約40年にわたり同所に居住し、店舗を営んできており、既に高齢であることから、本件土地を使用する必要性は切実である。Xが提供する立退料ではほぼ同じ条件の借地を求め店舗を開店することは困難で、立退料の提供は正当事由を補完するとは認められない。
【寸評】
 正当事由の判断は「土地の使用を必要とする事情」を比較することが中心的な考慮要素であり、立退料の申出はあくまで補完要素である。借地借家法6条は、「土地の使用を必要とする事情」「従前の経過」「土地の利用状況」「財産上の給付の申出」を考慮して正当事由がなければ更新拒絶は認められないと定めているが、各考慮要素の関係が必ずしも明らかではないので改めて紹介する。(弁護士 大竹寿幸)


毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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