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東京借地借家人新聞


2010年4月15日
第517号

全借連第28回定期総会開催

全国から92名、東京から54名が参加

新しい組合運動で議論

全借連の名称変更は保留で継続審議に

全借連第28回定期総会(3月13日・14日上野水月ホテル)
全借連第28回定期総会(3月13日・14日上野水月ホテル)

 全国借地借家人組合連合会の第28回定期総会が、3月13日・14日の両日東京上野の水月ホテル鴎外荘で開催された。総会には全国から代議員・評議員・顧問3名を含み92名が参加した。東京からは11借組から54名の代議員と評議員が参加した。
 開会に当り、河岸清吉会長は「前総会以降、住宅事情は大きく変化し、総会の中で今後の運動の方向が明らかになるよう活発な討論を期待する」とあいさつした。
 来賓には全国公団住宅自治協の井上紘一事務局長、日本共産党の穀田恵二衆院議員が出席し、連帯のあいさつが行なわれた。自由法曹団など16団体のメッセージが紹介された。
 次に、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい代表理事で住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人の稲葉剛氏より「ハウジングプアの拡大と住まいのセーフティネット」と題して基調講演が行なわれた。
 稲葉氏は「追い出し屋など住まいの貧困ビジネスは、公的加入が不在もしくは公的介入が撤退したところに広がっている。公的保証人制度を突破口にして民間賃貸住宅市場への公による介入を強める必要がある」と指摘した。
 続いて、活動報告と運動方針が船越康亘副会長より報告され、「様変わりした住宅事情の中で新しい借地借家人組合運動の方向」が提案された。
 全体集会の討論では東京大田借組の桜井代議員より「組合の民主的運営と組合員が自ら相談会を開催した事例」など5名から報告があった。
 二日目は午前中に3つの分散会で運動方針案等について活発な討論が行なわれた。午後の全体会議では、分散会の報告の後、船越副会長より討論のまとめがあり、「全借連の名称変更については今総会で決議を保留し、引続き継続して検討していく」との提案を受けて、運動方針案及び予算案等を満場一致で採択した。
 新役員には会長に河岸清吉氏、副会長に船越康亘氏、佐藤富美男氏、事務局次長に中村敬一氏、細谷紫朗氏が再任され、東借連からは理事と常任理事7名が選出された。




 

なくそうハウジングプア!

住まいの貧困ネットが集会とデモ

新宿駅西口をデモ行進する貧困ネットワークの皆さん
新宿駅西口をデモ行進する貧困ネットワークの皆さん

 住まいの貧困に取り組むネットワーク主催の「なくそうハウジングプア!立ち上がろう借家人! 設立1周年記念集会&デモ」が3月22日午後1時30分から新宿農協会館会議室で開催され、約130名が参加した。
 ネットワークの代表世話人で住まい連代表幹事の坂庭国晴氏が開会のあいさつを行ない、昨年3月14日に設立されたネットワークの活動について報告した。当事者発言では、多摩借組の細谷事務局長が発言し、昨年の大阪高裁や京都地裁で更新料無効判決があってから、民間賃貸住宅の居住者から更新料の相談が増えていることにふれ、「今こそ法的根拠のない更新料をなくしていこう」と訴えた。

住まいの貧困ネット1周年記念集会
住まいの貧困ネット1周年記念集会

 パネルディスカッションではサポートセンターもやいの稲葉剛氏、全国追い出し屋対策会議代表幹事の増田尚弁護士、法政大学名誉教授の本間義人氏よりそれぞれの立場から居住貧困の問題や追い出し屋問題等が報告された。本間氏は「居住貧困を一掃するには生存権としての居住権を確立した住宅法制を創設させなければいけない」と強調した。
 4団体から連帯アピールがあり、最後に「住まいの貧困をなくすために」と題する集会アピールが採択され、集会は午後5時に閉会した。
 集会後、参加者は横断幕やプラカードを等を掲げて、連休で賑わう新宿駅周辺をデモ行進し、「ハウジングプアをなくそう」と訴えた。




家主の交替で頑張ってる

台東区根岸の室田さん

従前の契約は新家主に承継

敷金要求等の撤回を求める

賃貸マンションのある台東区根岸附近
賃貸マンションのある台東区根岸附近

 台東区根岸の賃貸マンションに住む室田さんは、本年2月に譲渡通知書を受取った。それは建物の所有者が交替したという通知であり、賃貸契約を結び直し、家賃の改定をしたいという内容のものだ。
 問題は、その際新たに家賃の2ヶ月分の敷金が必要であることだ。経済的に破綻した旧家主から敷金が返還される見込みは無い。敷金の二重払いは幾ら何でも理不尽な話である。そんな憤懣を他の居住者にぶつけている中で組合の存在を知り、相談した。
 組合は次の様に説明した。「借地借家法」31条及び判例(最高裁昭和46年2月19日判決)から、賃貸建物が新しい所有者に譲渡されると貸主の地位は当然に譲受人に承継される。家主が交替した場合、従来の賃貸借契約の条件・内容は、そのまま新家主に承継されるから契約を結び直す必要はない。旧家主から敷金が現実に引継がれたかどうかに拘らず敷金は旧家主から新家主に当然に承継される。従って新たに敷金を新家主に預託する必要はない。勿論家賃の改定に応ずる必要もない。
 組合の説明を受け、マンション居住者は協力して新家主の新たな敷金要求に対してその不当性を追及し、撤回させることを決意した。




【判例紹介】

借家契約の更新料支払特約と消費者契約法10条に違反し無効とした事例

借家契約における更新料支払特約を消費者契約法10条に違反し無効とした2つの事例
(事例1)京都地裁平成21年7月23日判決
 賃借人Xは賃貸人Yに対しマンション賃貸借契約締結に際し保証金35万円(敷引特約により30万円は返還されない)を支払い、また2年毎の契約更新の際には更新料特約に基づき更新料11万6000円を支払った(賃料月5万8000円)。これに対してXがYに対し敷引特約と更新料特約が消費者契約法10条に違反し無効であると主張して提訴したのが本件であり、裁判所はXの請求を認容した。理由は、いずれの特約も、「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する」ものと評価した上で、敷引特約は月額賃料の約5か月分を無条件に差し引くものであること、Yのする敷引金の法的性質に合理性は認められず、また更新料特約も法定更新であれば支払う必要のない対価であること、更新料の法的性質について、更新拒絶権放棄の対価、賃借権強化の対価、賃料の補充、中途解約権の対価といったYの主張に合理性が認められないことから、民法1条2項の規定する基本原則に反して賃借人Xの利益を一方的に害するものであるからとした。
(事例2)大阪高裁平成21年8月27日判決
 賃借人Xは賃貸人Yとの間で平成12年8月、建物賃貸借契約を締結し、その後更新料支払の約定に従い、平成13年8月から平成17年8月まで5回にわたり、いずれも賃貸期間を1年とする合意更新の際、それぞれ更新料(5回分で50万円)を支払った(賃料月4万5000円)。これに対しXがYに対し、本件特約が消費者契約法10条又は民法90条に反し無効と主張して更新料の返還を求めた(他に敷金返還請求もあり)。これに対し第1審の京都地裁はXの請求をすべて棄却したが、控訴審である本件では、契約時に更新料の説明が無く、賃料としての認識がなかったこと、貸主は正当な理由がなければ自動更新を拒絶できず、借主に更新料支払義務はないなどの理由から、更新料の条項は消費者の利益を一方的に害しており、消費者契約法に反し無効であるとした。
(寸評)上記事例はいずれも借家の更新料特約を、消費者契約法違反を理由に無効とした。更新料支払義務は、本来借家人が負担すべき賃料支払義務のほかに、賃借人の義務を加重するものであるから、その支払については「消費者の義務を加重する」条項といいうる。もっとも、今挙げた2つの判例によって、借家契約における更新料特約がすべて消費者契約法に反すると断ずるにはやや早いかもしれない。実際、上記大阪高裁と同じ事例の京都地裁第1審では賃借人の請求は棄却されており、現在の判例の動向は流動的である。ただ、当然のように更新料を請求されている実務に影響を与える事例であるため報告する。(弁護士 西田穣)




組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 5月12日(水)・13日(木)午前11時〜午後5時(午後1時〜2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 5月14日(金)午後2時から組合事務所。相談者は要予約。
 連絡・(3982)7654。
■多摩借組「借地借家問題市民セミナー」
 5月22日(土)午後1時30分から八王子市民会館。6月26日(土)午後6時半から武蔵野公会堂。
 連絡・042(526)1094。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から大島総合区民センター。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。
 連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。
 連絡(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。
 連絡・(3801)8697。相談者は要予約。
■世田谷借組「相談会」
 毎月25日午後2時〜7時まで組合事務所。
 連絡・(3428)0828。
■北借組「法律相談」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。
 連絡・(3908)7270。
■東借連「街頭宣伝」
 4月24日(土)午後1時から2時、JR亀戸駅北口。


毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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