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東京借地借家人新聞


2009年8月15日
第509号

民間賃貸住宅部会は公正な審議を

全借連と住まいの貧困ネットが国交省に申入れ

貸主側に偏った議論やめて

追い出し被害当事者が実状訴える

国土交通省に要請する全借連と住まいの貧困ネットの代表
国土交通省に要請する全借連と住まいの貧困ネットの代表

 全国借地借家人組合連合会と住まいの貧困に取り組むネットワークの代表10名は、7月8日午後4時から国土交通省を訪ね、社会資本整備審議会・民間賃貸住宅部会の公正な審議について申入れを行なった。民間賃貸住宅部会では、今年の2月から7月までに6回の部会を開き、追い出し屋の規制をはじめ民間賃貸住宅のトラブルの紛争の未然防止など4つのテーマで審議を行い、7月31日の部会で「中間とりまとめ」を行い、年内に答申を発表する。
 ところが、審議内容はあきらかに貸主側に偏った議論がされ、部会の専門委員が貸主や管理会社・不動産会社の代表、臨時委員も定期借家推進側の学者・弁護士などで構成され、賃借人や消費者の代表は極めて少なく、「貸す側の論理台頭」(東京新聞)との指摘がされている。
 申入れ内容は、(1)部会の委員に借主側の委員を参加させること。(2)ハウジングプア解消に向けて公的な住宅施策の充実などを含めた総合的な議論を行なうこと。(3)追い出し屋被害の当事者の意見を聞く機会を設け、被害を根絶する抜本的対策を立案すること。(4)定期借家制度の現状と問題点について借主側の意見を十分に聞き、同制度の廃止に向けた議論を行なうこと。以上4点で、追い出し被害の当事者が実情を報告した。
 住宅局住宅局総合整備課の小善賃貸住宅対策官は、「家賃保証会社の契約書は問題のあるものが多い。部会の議論では、保証会社を規制することは意見が一致している。年内の答申までに被害者とのヒヤリングやパブリックコメントを通じ意見を聞いていく予定である」と発言した。




 

定期借家制度の推進許すな!

9月5日に学習交流会開催

 日本経団連は「2009年度規制改革要望」を発表しているが、「土地・住宅・都市再生分野」の中で、再び「定期借家制度の見直し」と「借地借家法における正当事由制度の見直し」を要望している。
 定期借家制度については、書面による説明義務を廃止し、既存の借家契約から定期借家契約に変更できるようにすること、正当事由については建物の老朽化や再開発を理由に更新拒絶が簡単にできる制度への改悪を狙っている。
 また、公団・公社・公営住宅などの公共賃貸住宅にも定期借家制度の導入がすすめられ、民間賃貸住宅を含め定期借家制度が国策として普及促進がされようとしている。
 借地借家法改悪反対全国連絡会では、借家人の居住を不安定にする定期借家制度の改悪を許さず、同制度の普及推進をさせないために以下の日程で学習交流会を開催する。
日時 9月5日(土)午後1時30分開会
会場 港勤労福祉会館(JR田町駅西口徒歩5分)
基調報告 全国公団自治協代表幹事多和田栄治氏「相次ぐ定期借家制度の導入で、国民の住宅問題の解決につながるのか」(仮題)その他




荒川借組が定期総会

合同相談会のような熱気

報告する荒川借組の生駒事務局長
報告する荒川借組の生駒事務局長

 蒸暑い日中にもかかわらず、区外からの方も合せ会員19名、来賓として東借連事務局長・台東借組・江東借組・東京土建荒川支部の方々を招き、7月5日(日)午後、町屋区民事務所において、荒川借組は第30回定期総会を5年ぶりに開催した。
 入会間もない方も多く、生駒事務局長より自身が抱えていた問題や組合に入った経緯、その後の活動など経験談を時代と共に話し理解を深めた。意見交換の場では、現在諸問題を抱えている会員が白ボードに具体的な図を描き、質問を事務局長や来賓者が答え、また他組合員が質問するという熱気を帯びた様相となり大いに盛り上がり閉会した。また、開催に当たり全借連・城北・太田・足立各借組及び松島弁護士からメッセージが寄せられた。




地代値上げで頑張ってる

世田谷区桜町の中野さん

協議なしの値上げNO

地主が地代増額の覚書を要求

 世田谷区に住む中野さんは、十数年前に更新をめぐり更新料の支払い問題で地主から地代の受け取りを拒否されて供託をしていた。
 今年の七月に地主からお知らせと覚書の二通の書類「土地賃貸借に関する地代の変更のお知らせと覚書」が送られてきた。その内容は、「長期にわたり地代の見直しを行っていませんでしたが、この度公租公課を基に下記の通り本年八月分地代より下記金額に変更を致したく、ご連絡申し上げます。(略)二通にご記名、ご捺印の上ご返送ください」と記載されていた。早速中野さんは組合に相談きた。
 組合では賃料の値上げ値下げについては双方の合意が原則であること。一方的な値上げ通告に応じる必要がないことを説明した。また双方が納得をしないならば裁判所に調停の訴えをおこすことが必要であり、最終的には裁判をして、判決を求めることとなると説明した。今回の件については、「一方的な値上げ請求は認めない。値上げ請求の根拠を示しなさい。公租公課が下がったときには地代の値下げをするのか。合意が出来るまでは現行の地代を支払うこと」を書面にして通知することにした。組合では「一方的な値上げ通知が増えています。簡単に応じる必要のないことを借地人は理解しておくことが必要です。借地が物納され国が地主の場合、30%近い地代が値下げされている事例もあり、借地人全体でがんばることが必要です」と話した。




【借地借家相談室】

家賃を支払っているのに貸主は領収書をくれない、どうしたらいいのか

(問)毎月賃料の支払をしているのに領収証をくれない。何か問題が起きるのではないかと心配で、何度も領収証の発行を請求したが、この状態が長期間続いている。どうすればいいのか。

(答)受取証書は賃料支払の事実を証明するものである。従って、「弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる」(民法486条)。即ち、借主は賃料を支払った時には、貸主に対して、受領した旨の記載された受取証書を請求する権利がある。受取証書は、その形式はどのようなものでもよい。通常は領収証が用いられる。
 民法533条は「双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる」と同時履行の抗弁権を規定している。
 では、賃料の支払いと受取証書交付は同時履行の関係に立つのか。
 判例上は、弁済と受取証書の交付は同時履行の関係にあり、借主は賃料の支払いと引換えに受取証書の交付を請求出来ると解されている(大審院昭和16年3月1日判決)。受取証書の交付と同時引換えでなければ債務の履行を拒むことが出来るのであるから、貸主が受取証書を交付しない場合は、借主は賃料支払を拒否することが出来る。
 「受領拒絶の態度を改め、以後賃料を提供されればこれを受領する旨を表示する等の受領拒絶を解消する措置を何らとっていない場合のように、受領拒絶の意思が明確と認められる場合には、口頭の提供さえしなくても、債務不履行の責任を負うこともない」(最高裁昭和32年6月5日判決、同旨昭和45年8月20日判決)従って、貸主が以後賃料を提供されれば、受取証書を交付して受領すると明確に表明している場合は別にして、交付しないという意思を撤回する措置を何らとっていない場合は、貸主が受取証書を交付しないという意思が明確であると認められる(民法494条の「受領拒否」に該当する)ので、以後の賃料を提供しなくても、借主が支払わないことに対して、何ら債務不履行の責任を問われることはない。
 だが、借主の安全を考慮すると不払のままにしないで、法務局へ賃料の弁済供託をする方が無難である。


毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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