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東京借地借家人新聞


2009年7月15日
第508号

6・14 住まいは人権デー

池袋で住まい連と貧困ネットが街頭宣伝

公共住宅増やし家賃補助を

リレートークで安心できる住まいの実現訴える

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池袋東口でリレートークを行う佐藤東借連会長

 1996年6月、トルコのイスタンブールで第2回国連人権居住会議が開催され、最終日の6月14日に「居住の権利は基本的人権である」であることが世界各国の合意で宣言された。
 しかし、日本では「派遣切り」「ネットカフェ難民」「ホームレス」など、暮らしの基盤である仕事と住まいを脅かされる人々が増え続けている。国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)は、6月14日を「住まいの人権デー」として運動している。
 今年は、住まいの貧困に取り組むネットワークと共催で、6月14日午後池袋駅東口で街頭宣伝行動を行なった。

追い出し被害当事者も発言

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横断幕をかかげる東借連の役員

 各団体の代表は、住まいに困る人が増え都営住宅の応募倍率が30倍〜40倍に上昇する一方で、10年間に1戸の都営住宅も新規に建設しない石原都政の「建てない、入れない、追い出す」に徹した冷たい住宅行政を批判した。東借連の佐藤会長は「私たちが安心して住み続けられるためには公営住宅の建設の促進、低所得者への家賃助成、公的な保証人制度の創設こそが必要である」と訴えた。
今回のリレートークでは家賃保証会社から家賃が少し遅れただけで激しい家賃の取立や追い出しの被害に会った当事者や新聞奨学生の過酷な労働と劣悪な居住環境の実態等が報告された。

都の住宅政策で緊急申入れ

住まい連・東借連が

 住まい連、都庁職住宅支部と東借連の三団体は、6月25日午後「東京の住宅政策に関する緊急申入れ、『住まいの貧困』を直ちに解決するために」を、石原都知事、都議会各会派あてに提出した。申入れは、「都営住宅のセーフティネット機能の抜本的強化と新規建設・供給や若者向けに小規模住宅の活用などの拡大」等6項目で、都議会議員選挙で住まいの貧困問題の解決を取り上げるよう要請した。




 

借家の明渡しで頑張ってる

大田区大森南町の山崎さん

家主が地主に借地返還

管理会社が地主と家主の代理人に

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公道側更地の奥が山崎さんの平家建居宅

 大田区大森南3丁目所在の木造平家床面積約66平方メートルの二戸建の手前部分を賃借中の山崎さんは、家主から依頼された管理会社から建物を明渡すよう通告をされた。家主は借地人で更新料問題で組合からアトバイス受けて不払いの対応をしていたが、建物奥部分の借家人の死去により家賃収入が減り地主に借地権買取を申し入れたところ、地主代理人の管理会社は更地にすることを条件にしてきた。永年にわたりとくに借地人のトラブルで組合と協議を重ねてきた不動産管理会社は今度は借家の明渡しで家主の代理人も務めることになった。
 写真の公道側が更地になり土地の有効利用が可能となったことで、地主の思惑が明渡し請求になったようだ。
 この建物は旧地代家賃統制令が適用された古い建物で、これまで補修工事して今日至っており、明渡しにはこれまでの工事費を踏まえた補償が当然と、山崎さんは組合の立会いの下に管理会社に主張。地主家主の誠意ある対応をまって協議する決意である。




組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
  月26日(水)・27日(木)午前11時〜午後5時(午後1時〜2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「旅行会」
 9月27日(日)・28日(月)の1泊2日、新潟県瀬並み温泉。連絡・(3982)7654。
■多摩借組「定例法律相談会」
 9月12日(土)午後1時30分から組合事務所。担当は山口真美弁護士。相談者は要予約。連絡・042(526)1094。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から大島総合区民センター、担当西田穣弁護士。連絡・(3640)4694。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。連絡(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。連絡・(3801)8697。相談者は要予約。
■世田谷借組「相談会」
 毎月25日午後2時〜7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■北借組「法律相談」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。連絡・(3908)7270。
■大田借組「理事会」
 8月22日(土)午後6時から大田区生活センター(予定)。連絡・(3735)8481。




【判例紹介】

家主に対する修繕義務不履行による賠償請求は通常生ずべき損害が限度

 借家人から家主に対する修繕義務不履行による営業損害の賠償請求について、借家人が損害を避けることができたと考えられる時期以後の損害については認められないとされた事例(最高裁平成21年1月19日判決 判例時報2032号45頁)
(事案)
 家主は借家人に対し、平成4年3月5日、賃料月額金20万円、使用目的を店舗として、建物を賃貸した。
 平成9年2月12日、本件店舗の床上30センチメートルから50センチメートルまで浸水(本件事故という。)したため、カラオケ店の営業ができなくなった。借家人は家主に対し、修繕を求めたが、家主はこれに応じなかった。

(請求)
 借家人は家主に対し、カラオケ営業ができなくなったとして、営業利益相当額の損害賠償の請求をした。
 他方、家主は、修繕義務を否定し、賃料不払い等を理由として、建物賃貸借契約を解除し、建物明渡しの請求をした。

(原審名古屋高裁金沢支部判決)
 家主の本件建物賃貸借契約解除は無効として、建物明渡請求を棄却するとともに、家主が修繕義務をつくさなかったためカラオケ店の営業ができなかったとして、本件事故の日の1か月後である平成9年3月12日から平成13年8月11日まで4年5か月間の得べかりし営業利益3104万2607円の損害賠償の請求を認めた。家主から上告申立て。

(最高裁判決)
 これに対し、最高裁は、(1)本件店舗は老朽化して大規模な改修を必要としていたので、賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続しえたとは考えられないこと、(2)家主から賃貸借契約解除の意思表示がされて、本件事故から1年7ヶ月経過後に本件損害賠償請求訴訟を起こした時点では営業再開の実現可能性が乏しいものとなっていたこと、(3)借家人が本件建物以外の場所でカラオケ営業を行うことができないとは考えられないことを理由に、カラオケ店の営業を別の場所で再開させる措置を執ることなく発生した損害の全てを家主に請求することは条理上認められないとし、借家人が別の場所でカラオケ店を再開できたと解される時期以降における損害は通常生ずべき損害に当たらないと判示して、原判決を破棄し、名古屋高等裁判所に差し戻した。

(短評)
 本判決は、営業損害の範囲について、民法第416条1項に定める通常生ずべき損害の限度で認めるとしたものであり、借家人に対し厳しいものがあるが、実務上、意義をもつものである。
(弁護士 榎本武光)


毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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