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東京借地借家人新聞


2009年6月15日
第507号

安心できる住まいを奪う
追い出し屋に法規制を

ハウジングプアの解決こそ最優先の課題
全国追い出し屋対策会議が集会

追い出し屋被害の根絶を求めて開催された集会
追い出し屋被害の根絶を求めて開催された集会

 家賃保証会社や管理会社から家賃を滞納した借家人に対し悪質・違法な家賃の取立てや賃貸住宅の明渡しを迫られる事例が急増している。今年2月に大阪で全国追い出し屋対策会議が結成され、5月10日に東京で同会議と住まいの貧困に取り組むネットワークの共催による集会が行なわれた。東借連・全借連からも12名が参加した。

追い出しが前提のビジネス

 反貧困ネットワーク代表の宇都宮健児弁護士は、開会の挨拶で「年越し派遣村の相談を通じつくづく感じたのは、住まいは人間らしく生活する基本中の基本であり、ハウジングプアの解決なくして貧困問題の解決はない。」と訴えた。
 続いて、NPO法人自立サポートセンターもやいの稲葉剛氏より「ハウジングプアと追い出し屋対策」と題して基調報告がされた。稲葉氏はハウジングプアの全体図としてC「家があるが居住権が侵害されやすい状態(会社名義の賃貸住宅、借家人の権利を制限する契約の賃貸住宅等)」、B「屋根があるが家がない状態(ネットカフェ、施設、個室ビデオ、飯場など」、A「屋根がない状態(野宿)」の三つに分類し、追い出し屋の広がりでCの層が拡大し、CからBやAへの動きが加速していると指摘した。また、「家賃保証会社や管理会社は追い出しを行なうことが前提のビジネスであり、家賃保証をビジネスとすること自体が間違いである。住まいについて公共性を取戻し、追い出し屋に対する規制を強化する必要がある」と強調した。

追い出し被害当事者が告発

 次に、被害を受けた当事者が発言。「期日までに家賃を支払わない時は鍵を交換し、家財道具を処分されても異議を述べないと念書を書かされ、支払えなくて家財道具を全て処分された」、「私が留守の時取立て屋に5時間にわたり玄関のチャイムを鳴らされ、娘が精神的に不安定になった」等々深刻な被害の実態が明らかにされた。また、大阪・広島・福岡・東京・宮崎の各地から、同会議に結集する弁護士や司法書士より追い出し被害の実例が詳しく報告された。最後に、同会議代表の増田尚弁護士より「追い出し被害根絶のための法規制の実現を求める」集会宣言が提案・採択された。




 

拡大月間の拡大目標決める
東借連第3回理事会と拡大推進部会開催

地下鉄西大島駅で宣伝する東借連役員
地下鉄西大島駅で宣伝する東借連役員

 東借連第3回理事会が5月23日午前10時から江東区総合区民センターで役員8名の参加で開催された。
 理事会では、当面の運動課題として、追い出し屋対策会議院内集会(5月28日)、住まいは人権デーの取り組み(6月14日池袋東口での街頭宣伝)に参加することを確認した。第4回相談員養成学習会を10月に開催し、テーマを「借地借家問題と消費者契約法」、講師を東借連常任弁護団の榎本弁護士が担当することが決まった。今後は相談員相互の経験交流を行なっていくことを確認した。また、今年の夏季研修会は総選挙情勢等を考慮し中止に決定した。
 東借連の役員8名は、昼食後午後1時から会場の近くの地下鉄西大島駅で新しく出来た東借連の入会リーフをまいて宣伝し、ハンドマイクで東借連の活動を訴えた。
 街頭宣伝終了後、同じ会場で「組織強化・拡大推進部会」を開催。部会では、各組合の組織拡大と組織活動の交流を行なった。荒川借組では「全組合員に『一人が一人の仲間を増やす』訴えを出し、総会の開催に向け役員と議論を始めている」、足立借組では「役員会で新リーフの宣伝を行なう等を決めた」等の発言があった。部会では150名の拡大目標を達成させるために各単位組合の目標を決定した。




契約の更新で頑張る
豊島区池袋本町の松田さん

地主の代理人更新料請求を断念
地代の値上げ請求も撤回させる

松田さんの住む豊島区池袋本町付近
松田さんの住む豊島区池袋本町付近

 東武東上線北池袋の駅から数分の所に20数坪借地している松田さんは、親の代に地主との間で更新料の支払い問題で争いになって一時期、供託したこともあった。その後、地主が地代の受け取りを認め、毎月末頃に集金に来ていた。去年の暮れに地主が集金に来たときに「来年2月に更新の時期をくるので、あらためて更新料の支払いと地代の値上げをしたい。詳しい話は代理人の不動産会社をよこす」と言ってきた。
 松田さんの親は組合に所属していたが、親の死亡とともに組合と疎遠になっていたが、借地問題でなにかあれば組合に相談していた親の姿を思い出し古いチラシで組合に連絡してきた。
 組合では、松田さんの話から借地として借りた当時から、契約書がない契約であったことを確認し、最高裁の更新料裁判の判例を説明し、支払いを拒絶することを確認した。同時に、地代の値上げ請求に対しても、最高裁の地裁への通達などで公租公課の三倍程度であれば値上げに応じる必要のないことを説明し、地主並びに代理人の不動産会社にそのように通知することにした。通知を受けた不動産会社は組合の通知に対して更新料の支払いを断念し、地代の値上げ請求も撤回した。
 しかし、不動産会社はこれでは仕事にならないと考えたのか、この際、契約書を作成することを提案してきた。
 契約書作成には応じることにしたが、その際は地代の支払い方法を変更し、今後は銀行振込とすることを確認して作成した。




【借地借家相談室】

会社を解雇されても社宅の明渡しは
即時退去ではなくて猶予期間がある

(問)毎月8万円の家賃を支払って社宅に住んでいたが、人員整理を理由に会社を解雇された。会社は即刻社宅から退去せよというが、直ぐ立退かなければならないのか。
(答)会社が従業員の福利厚生のために設けた住宅が一般的な社宅である。借地借家法との関係が問題になるのは福利厚生施設としての社宅である。
 判例は社宅の使用料が賃料として社会的に認められるかどうかを判断基準(使用料の高低)として、借地借家法の適用の有無を判断している。
 (1)【使用料が無料か、有料であったとしても低額で名目的な場合】
  例えば、使用料を毎月2万円出しているが、その社宅と同程度の利用価値のある普通の借家の家賃水準が月10万円以上もするような場合は、その使用料は借家を使う対価として支払われる家賃とは考えられず、その使用関係は、社員である期間に限って社宅の使用を認められる特殊な契約関係で賃貸借関係ではないというのが判例(最高裁昭和44年4月15日判決、最高裁昭和39年3月10日判決)である。従って、借地借家法の適用はなく、会社に社宅使用規則があれば、それが著しく居住者に不利でない限り使用規則は有効である。
  しかし、最高裁の判例では、明渡し期間について、国家公務員宿舎法と同様に無料の場合は60日、有料の場合は6か月の明渡しの猶予期間を基準とすべきであるとしているので、明渡し期間については、この猶予期間が基準になる。
 (2)【使用料が普通の借家の家賃水準と同等かそれに近い場合】
 この場合の使用料は借家を使う対価として支払われる家賃であり、その使用関係は賃貸借関係で借地借家法の適用があるというのが判例(最高裁昭和31年11月16日判決)である。
 このような場合に「退職と同時に明渡す」というような社宅使用規則があっても、借地借家法の規定に違反して無効である。即ち、会社は、6か月以上前に明渡を申し入れなければならず(同法27条)、また会社に明渡しを求める正当な理由がなければ明渡しは認められない(同法28条)。従って、居住者が社宅からの退去を拒否した場合、明渡しという裁判所の判断が出るまでは退去を強制できない。




組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 7月15日(水)・16日(木)午前11時〜午後5時(午後1時〜2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 7月17日(金)午後2時から城北法律事務所。担当田見高秀弁護士。相談者は要予約。連絡・(3982)7654。
■多摩借組「定例法律相談会」
 7月4日(土)午後1時30分から組合事務所。担当は山口真美弁護士。相談者は要予約。連絡・042(526)1094。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から大島総合区民センター、担当西田穣弁護士。連絡・(3640)4694。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。連絡(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。連絡・(3801)8697。相談者は要予約。
■世田谷借組「相談会」
 毎月25日午後2時〜7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■北借組「法律相談」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。連絡・(3908)7270。
■住まい連・住まいの貧困に取り組むネットワーク共催「住まいは人権デー・街頭宣伝行動」
 6月14日(土)午後3時から4時15分まで、池袋駅東口広場でチラシの配布。参加できる方は、(3982)7277東借連本部までご連絡下さい。


毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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