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東京借地借家人新聞


2009年5月15日
第506号

東借連第3回相談員養成学習会
借地借家法の借家編をテーマに

定借契約への切替えに注意
正当事由・修繕・原状回復等を学ぶ

東借連第3回相談員養成学習会(4月18日、豊島区)
東借連第3回相談員養成学習会
(4月18日、豊島区)
講演する白石光征弁護士
講演する白石光征弁護士

 東借連「第3回相談員養成学習会」は、4月18日午後1時30分から豊島区東部区民事務所において36名の参加で開催された。今回の学習会には、東借連加盟組合以外に千葉・埼玉・神奈川の各県連借組と自立生活サポートセンター・もやいの代表の参加もあった。
 学習会は、野内副会長の司会ですすめられ、冒頭佐藤会長より「相談員養成学習会は今回で3回目だが、相談にのれる組合役員を養成するために今後も継続して実施していきたい。今日、職を失うと同時に住まいを失う人が増えている。借地借家法をしっかりと理解をして、住み続ける権利を守っていこう」と訴えた。

判例に基づき法律の解説が

 講師の白石光征弁護士より、借家借家法の借家編をテーマに休憩をはさんで約2時間の講演が行われた。はじめに、民法に基づいた賃貸人と賃借人の基本的な権利義務が説明された。次に、「契約期間」、「更新後の期間」、「特殊な賃貸借として(1)定期建物賃貸借、(2)取壊予定建物賃貸借」、「一時使用目的建物賃貸借」、「敷金と原状回復義務」、「正当事由」、「家賃」、「借家の修繕」、「借家の譲渡・転貸」、「当事者の変更」について、法律の条文の解釈と裁判例に基づいて詳しい説明がされた。
 定期借家契約の締結に当たっては、書面による契約と事前に書面を交付して説明する義務が定められ、説明をしないと普通借家契約になる。普通借家契約から定期借家契約への合意による切り替えについては、居住用の場合には平成12年3月1日以前の契約は法律の付則3条で禁止されている。それ以外でも、貸主から切り替えを要求されても、拒否すれば切り替えはできないこと等が指摘された。
 また、通常損耗分の原状回復費用を賃借人に負担させる特約については、二つの判例が説明され、平成17年12月16日の最高裁の判決で通常損耗による修理費用は本来賃料の中に含まれており、よほど具体的な説明と明確な合意がない場合でなければ認められない。さらに、消費者契約法が施行された平成13年4月1日以降に契約(合意更新)した場合には、平成16年12月17日の大阪高裁判決で、賃借人に一方的に不利益な条項で消費者契約法10条により無効にすることができることが強調された。
 質疑応答では、具体的な事例に基づき参加者相互に活発な意見交換が行われた。




 

追い出し屋被害ホットライン
深刻な相談63件を受付ける

マスコミに報道された追い出し屋被害ホットライン
マスコミに報道された
追い出し屋被害ホットライン

 住まいの貧困に取り組むネットワークの主催、全国追い出し屋対策会議他による「追い出し屋被害ホットライン」が4月19日の午前10時から午後6時まで城北法律事務所で実施された。全国追い出し屋対策会議の弁護団と東借連・全借連の役員7名が電話相談を行なった。
  お昼のNHKで報道されると、電話は鳴り止まず全部で63件の相談を受けた。追い出し業者からの被害は11件で、「家賃を2ヶ月滞納したら保証会社に鍵を交換するとの書面を玄関のポストに入れられた」、「家賃を滞納したら、管理会社が保証人の了解を得たからと仏壇と位牌を残して全て撤去された」、「家賃を2ヶ月滞納したら保証人の実家の母親に激しい取立てが繰り返し行なわれ、滞納家賃を支払っても4月中に強制的に追い出すと脅かされている」等々深刻な相談が相次いだ。
  また、今回は解雇・雇い止めなどの労働相談が6件、生活に困窮し現在野宿生活をしている等の生活相談含め63件あった。昨年11月に派遣切りで会社の寮を追い出され、4ヶ月ホームレス生活で所持金29円しかないという深刻な相談もあり、もやいのメンバーが車で当人を東京に連れて帰り、翌日生活保護の申請を行なった。今回のホットラインを通じ、追い出し被害だけでなく住まいの貧困問題の深刻な実態が明らかになった。




追い出し屋被害で頑張る
豊島区内の斉藤さん

保証会社が強圧的な取立て
家賃の支払い1日遅れても違約金

 豊島区内に住む斉藤さんは母子家庭である。4年前に、現在住んでいるマンションの入居時の連帯保証人に父親を立てていた。2年前の更新時に、仲介した不動産会社が今後、連帯保証人は家主が指定した保証会社でなければ受け付けないと言われ、やむを得ずA保証会社と保証委託契約を結んだ。
  その後、家賃の支払いが毎月27日迄に間に合わなくなると保証会社の担当者が押しかけ、一時間もドアを叩いたり、ベルを鳴らし続けることや携帯の電話にかけてくるなどの強圧的な取立て行為を行うようになった。本来、このマンションはオートロックでドアまでは入ってくることが出来ないにも関わらず、侵入してきたために、やもえず警察に通報するなどの対抗措置を取った。しかしながら、仲介の不動産会社と家主は、近隣に迷惑をかけたとの理由で明渡しを請求してきた。同時に、この保証会社は、一日でも家賃の支払いが遅れると保証契約を打ち切り、改めて更新し、違約金として1万円を支払うという特約をたてに、賃料以外に1万円を取っていた。その結果、昨年1年間で12万円を払わされていた。まさに、今問題になっているスマイルサービスと同様な手口で違法行為を行っていたのである。斉藤さんは弁護士との相談の中でこのような悪質な行為に法的措置も含めた対処をすることにした。




組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 6月17日(水)・18日(木)午前11時〜午後5時(午後1時〜2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 6月19日(金)午後2時から城北法律事務所。担当田見高秀弁護士。相談者は要予約。
 「09年度定期総会」
 6月13日(土)午後1時30分から豊島区東部区民事務所。連絡・(3982)7654。
■大田借組「役員研修会」
 5月17日(日)・18日(月)千葉県勝浦で一泊2日。連絡・(3735)8481。
■多摩借組「第30回定期総会」
 6月7日(日)午後1時20分から国分寺労政会館(JR国分寺駅南口徒歩7分)。連絡・042(526)1094。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から大島総合区民センター、担当西田穣弁護士。連絡・(3640)4694。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。相談者は要予約。連絡(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。連絡・(3801)8697。相談者は要予約。
■世田谷借組「相談会」
 毎月25日午後2時〜7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■北借組「法律相談」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。連絡・(3908)7270。




【判例紹介】

更新料を支払う借地契約上の
合意ない場合に
更新料請求は認められない

 東京地裁判例―更新料を支払う旨の借地契約上の合意がない場合に、地主からの更新料支払請求は認められないとされた二つの事例
(事案の概要と判旨)
【事例一】東京地裁平成二〇年八月二五日判決
 AはBに昭和二四年に土地を貸した(墨田区)。Aは死亡し、Cが相続。CとBは、昭和四三年に借地契約を合意更新(一回目)。この際、更新料四万円が払われた。昭和六三年に法定更新(二回目)。Bが平成五年死亡し、その子であるYが相続。地主Cが平成一八年死亡、その子Xが相続。平成二〇年二月に法定更新(三回目)。XはYに対し最後の更新につき一五〇万円(土地時価の五%)の更新料を請求して提訴した賃貸借契約書には更新料に関する定めが一切なかった。判決は、「宅地賃貸借契約における賃貸期間の満了にあたり、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人の賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習が存在するとはいえない(最高裁第二小法廷昭和五一年一〇月一日判決)」として、地主の更新料支払請求を棄却した。
【事例二】東京地裁平成二〇年八月二九日判決
 DはEに昭和二一年に土地を貸した(豊島区)。DとEは昭和四一年に合意更新(一回目)。さらにDとEは昭和六一年に合意更新(二回目)。Dは昭和六二年に死亡し子の甲が相続。Eは平成一六年死亡し配偶者の乙が相続。平成一八年は法定更新(三回目)。甲は、更新料の合意または慣習を根拠に五二五万円の更新料(土地時価の七%)を請求して提訴してきた。昭和六一年の合意更新時に作成した契約書には更新料の定めは一切なかったが、更新料と推定される二二〇万円の支払がEからDになされている。判決は、「次回の更新に際して更新料の支払が要件になるか否かは、貸主であるD側にとっても、借主であるE側にとっても重要な事項であり、これが当事者間で合意されたのであれば、本件賃貸借契約書にその趣旨の条項が書き込まれてしかるべきところ、本件賃貸借契約書にはそのような条項が存在しない」として更新料支払合意の存在を否定し、慣習を根拠とした甲の請求に対しては「一定の基準に従って当然に更新料を支払う旨の慣習が存在するとまで認めることはできない」として、地主の更新料支払請求を棄却した。
(寸評)
 右の【事例二】は筆者が代理した組合員の事例である。地主は控訴したが、第一回以前に取り下げ、請求棄却の一審判決が確定して解決した。借地契約書に更新料を支払う旨の条項がなく更新料支払合意が認められない場合に、借地契約が期間満了時に法定更新したときには、借地人には更新料の支払義務がなく、更新料を支払う事実たる慣習の存在は認められないというのは、【事例一】の判決も引用している昭和五一年最高裁判決により確定した解釈で、現在の下級審もこれに従っている事例として紹介する。(弁護士 田見高秀)


毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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