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東京借地借家人新聞


2009年10月15日
第511号

安心できる賃貸住宅の実現を!

追い出し屋に法規制を求める市民集会開催

低所得者に家賃補助を

今こそ住宅セーフティネットの確立を

安心できる賃貸住宅の実現を求める市民集会
安心できる賃貸住宅の実現を求める市民集会

 敷金が返ってこない、更新料などの不合理な契約条項、「追い出し屋」被害など、賃貸住宅に関わるトラブルが急増している。法律家や市民でつくる全国追い出し屋対策会議や住まいの貧困に取り組むネットワークなどは、9月13日に四谷の主婦会館で「安心できる賃貸住宅の実現を求める市民集会」を開催し、約90名が参加した。
 同ネットワークの世話人の稲葉剛氏(NPO法人自立サポートセンター・もやい代表幹事)は開会挨拶で、「今こそ安心して暮らせる賃貸住宅を取戻そう」と訴えた。

公的な住宅保障と再配分を

 基調講演は、平山洋介氏(神戸大学教授)が「住宅セーフティネットの論点」題して講演した。平山氏は、日本の住宅政策の特徴について、「標準ライフコースを歩む中間層を優遇し、家族や会社、持家の取得を促進する保守主義の政策を採り続けてきた。開発主義と競合し、景気対策として持家建設が促進され、建てては壊すスクラップ・アンド・ビルドを続けてきた。その後、新自由主義の政策転換を行なったが、セーフティネットである公営住宅を圧縮すればするほどセーフティネットが必要となる矛盾に陥っている」と指摘。公営住宅などの公的保障と社会的再配分が必要であり、低所得者に対する家賃補助の創設を強調した。

定期借家制度廃止させよう

報告する細谷事務局長
報告する細谷事務局長

 全国追い出し屋対策会議の増田尚弁護士は、国土交通省の民間賃貸住宅部会の審議の内容と8月に発表された「中間とりまとめ」の問題点を報告し、「部会は不動産業界の代表や定期借家制度を推進する学者などが委員の多数を占め、追い出し屋の規制問題も一進一退の状況にある。9月18日部会のヒヤリングに参加して追い出しや被害の根絶など法規制などを大いに訴えていきたい」と発言した。
また、東借連の細谷紫朗事務局長が定期借家制度の問題について発言。「定期借家制度が普及・促進されたら、借家人の居住は益々不安定になる。住む権利を奪う同制度は廃止させることこそ重要」と訴えた。更新料無効判決を勝ち取った京都敷金・保証金弁護団の谷山智光弁護士は、更新料110番で100件の相談があったことを報告した。




 

相談員養成学習会の取組み等討議

品川・西部両借組の除籍処分を決定

東借連第6回理事会

 東借連第6回理事会が9月29日午後6時から豊島区東部区民事務所において開催され、役員10名が参加した。前回理事会以降の活動と収支報告等が報告された。
 討議事項では、(1)足立借組の若色栄一氏(同副組合長)が理事に推薦され承認された。(2)第4回相談員養成学習会が10月31日に開催し、各組合3名以上の動員を確認した。(3)東借連の2010年度東京都予算要求の要求内容について討議した。(4)住まいの貧困の解決をテーマにした住宅研究集会が住まい連等の共催で10月24日に日本青年館で開催することを確認した。(5)更新料無効大阪高裁判決を受けて、更新料問題の学習や相談活動を強化することを確認した。(5)品川・西部両借組の規約違反について討議を行った。総会や役員会も開催せず一部の幹部だけで東借連脱退を決め、組合員にも知らせずに両借組が連携して組合活動を行っている等の行為は、東借連規約第31条に基づき除籍処分とすることを参加役員全員の賛成で承認された。
 その他、地代実態調査の集計と組織の拡大強化は、組織強化・拡大推進部会で討議すること等を確認した。




明渡しで頑張ってる

豊島区池袋の斉藤さん

悪徳不動産屋が不当な言掛り

区役所に家賃振込むなとイヤガラセ

斉藤さんの賃借建物がある豊島区池袋3丁目付近
斉藤さんの賃借建物がある豊島区池袋3丁目付近

 豊島区池袋に住む斉藤さんは、かすかに光と像を感じる視力障害を持っていた。そのために生活保護の申請をし、生活をしていた。
 今年に入り家主の代理人兼管理人である地元の不動産屋より、「大声で騒いでいる。一人用として貸しているのに数人で住んでいる」などの言いがかりをつけられ、ただちに明渡せと請求された。地元でも、言いがかりをつけて賃借人を脅かしたり、他にも保証会社と結託して無理やり保証契約を締結することなどで有名なこの不動産屋は、賃借人とのトラブルなどがあとをたたない。
 相談に来た斉藤さんに代わって、「契約解除は通告期間や『正当な事由』がないことを理由に無効であること」を主張する書面を送ったところ、封も開けずに送り返してきた。その一方で振込している家賃は今までどおり受領するなど、言いがかりはつけるがその態度は、法的には一貫性のないものだった。区役所には「もう契約を解除したのだから、賃料を振込むな」などと電話をし、「更新はしないぞ」と斉藤さんにも電話をしてくるなど嫌がらせはエスカレートしてきた。組合では、斉藤さんに引き続き住み続ける権利があることを説明し、相手の主張にも動揺することのないよう話しをした。
 その後、この不動産屋からの連絡はなくなり、斉藤さんは「このような組合があってやっと落ち着きました。一人で対処していた時は不安と心配で眠れませんでした。今後は、なにかあれば組合と相談してがんばっていけると思います」と語っていた。




【借地借家相談室】

更新料約定は消費者契約法10条に違反し既払更新料の返還請求ができる

(問)更新料を否定する京都地裁(09年7月23日)判決があり、更に借主勝訴の大阪高裁(09年8月27日)判決では、支払済みの更新料の返還請求が認められたというが、どのような内容の判決であったのか。
(答)【更新料を中心にした事案の概要】00年8月に、以下の内容で建物賃貸借契約を結んだ。契約は1年更新、礼金6万円、家賃月4万5千円、敷金10万円、及び10万円の更新料約定付の契約であった。更新料は01年〜05年まで5回分が支払われた。06年の更新の際、更新料の支払を拒否し、同年11月30日に退去した。借主は、退去後、既払更新料返還を求めて京都地裁へ提訴した。
 裁判は更新料の法的性質を中心に争われた。貸主側は、更新料は(1)更新拒絶権放棄の対価(紛争解決金)、(2)賃借権強化の対価、(3)賃料の補充(前払賃料)であると主張した。借主側は、更新料約定は消費者契約法又は民法90条により無効であると主張した。
 京都地裁(08年1月30日判決)は、更新料は(1)(2)は評価できるが、対価としての性質は希薄であり、主に(3)賃料補充(前払賃料)であると認定した。そして「更新料約定が無効であることを前提とする原告の不当利得返還請求には理由がない」として借主の更新料返還請求を棄却した。借主はこの判決を不服として大阪高裁へ控訴した。
 大阪高裁は、1審の更新料「前払賃料」説を仮に更新料が前払い賃料であれば借主が中途解約した場合、未経過期間分に相当する額の精算するのが当然である。だが本件更新料については、そのような規定は定められていない。従って「法律的に、これを賃料として説明することは困難であり、本件更新料が賃料の補充としての性質をもっているということもできない」として貸主側の主張を斥けている。そして「更新料約定は、消費者契約法10条に違反し、無効である」として更新料特約を否定した。従って「更新料は法律上の原因なくして支払われた」ものであるから、既払更新料は返還すべきであるとした。
 但し、消費者契約法(01年4月1日)施行前の契約による01年8月支払の更新料は有効として、既払更新料から10万円を除いた40万円の返還を認めた。尚京都地裁(同年9月25日)で3件の同趣旨の判決があった。




組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 11月18日(水)・19日(木)午前11時〜午後5時(午後1時〜2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 11月20日(金)午後2時から城北法律事務所。相談者は要予約。連絡・(3982)7654。
■多摩借組「定例法律相談会」
 11月14日(土)午後1時30分から組合事務所。担当は山口真美弁護士。相談者は要予約。連絡・042(526)1094。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から大島総合区民センター、担当西田穣弁護士。
 「第41回定期総会」
 11月8日(日)午前10時から江東区大島総合区民センター。連絡・(3640)4694。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。連絡(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。連絡・(3801)8697。相談者は要予約。
■世田谷借組「相談会」
 毎月25日午後2時〜7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■北借組「法律相談」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。連絡・(3908)7270。
■大田借組「借地借家問題講座・相談会」
 11月8日(日)・9日(月)の一泊二日で「バス旅行」、新潟県瀬波温泉。連絡・(3735)8481。


毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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