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東京借地借家人新聞


2008年6月15日
第495号

誰れのための民営化か

住まい連が民営化問題でシンポ
郵便事業が儲けの対象に
公団・公社の民営化ストップを

開会の挨拶をする坂庭住まい連代表幹事
開会の挨拶をする
坂庭住まい連代表幹事

 国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)は、5月15日午後1時30分から千代田区一ツ橋の教育会館において「郵政民営化と公団・公社住宅の民営化を問う」とのテーマでシンポジウムを開催した。
 主催者を代表して住まい連代表幹事の坂庭国晴氏が挨拶した。坂庭氏は「公共住宅団地の不可欠な4つの施設の一つとして郵便局は団地の生活を支え、かけがえのない金融サービスと通信センターを担っている」と訴えた。

■民営化で廃止された郵便局
 次に、「郵政民営化の問題点と見直しの展望」と題して郵政産業労働組合書記長の廣岡元穂氏が報告した。報告では、政府や与党は郵政民営化法を成立させたときに、「セーフティネットである郵便局のネットワークが維持される。国民の利便に支障が生じないように万全を期す」と約束したが、今年の10月1日から各種手数料が値上がりし、全国の簡易郵便局が廃止され、ATM(現金自動預払機)や利用の少ないポストが撤去されるなど郵便事業のサービスが後退している実態が明らかされた。さらに、郵便事業が儲けの対象となり、変額保険や株式等リスク商品が販売されている。郵政グループの各社の経営トップや取締役が財界幹部によって独占され、郵便事業がこれら企業の事業と密接に提携されることによって、事実上財界にのっとられていることが指摘された。すでに、自民党の中でも「郵政民営化見直し」の動きが起き、野党が提出した「郵政民営化見直し法案」が昨年12月に参院で可決されるなどの動きが報告された。
 この他、都市機構労働組合の根岸達哉委員長、神奈川県公社自治協の大坂純一郎事務局長、千葉幸町団地自治会の長岡正明会長より、公社住宅や公団住宅での民営化をめぐる動きや民営化を阻止する運動が報告された。
 討論のまとめとして、牛久保秀樹弁護士が「郵政民営化は抜本的な地方切捨てで自民党の中にも矛盾が起きている。公団住宅の民営化は簡単には進むものではない。賃借権がある限り勝手に追い出すことは出来ない。全借連・東借連などの賃借権を守ってきた運動の歴史を学ぶ必要がある」と発言した。




夏季研修会テーマ
「借地借家法の借地関係」
全借連総会に東京から10名の派遣決定
東借連第14回理事会

 東借連第14回理事会は、5月20日午後6時30分から豊島区東部区民事務所において10名の参加で開催された。
 理事会は佐藤会長の司会ですすめられ、経過報告と4月の拡大集計と新規相談者調査結果が細谷専務理事より、4月の収支報告が桜井会計よりそれぞれ報告された。
  討議事項では、(1)全借連第27回定期総会について、7月4日・5日大阪キャッスルホテルで開催される。東借連から代議員8名と評議員2名を派遣することを決定した。総会参加者の交通費について東借連会計で補助することを確認した。
 (2)住まい連「賃貸住宅の諸問題、トラブル110番」を6月14日午前11時から午後4時まで実施する。110番の代表電話は03―3833―2840。電話相談の担当者として理事会から7名が参加することが決まった。
 (3)2008年夏季研修会は8月30日午後1時30分から豊島区内の会場で開催することを確認した。研修会のテーマと講師は常任弁護団会議の決定通りとする。
 (4)東京都消費生活センターより「不動産専門機関相談窓口リストの作成」で東借連に依頼が来ている問題を議論し、今後消費生活センターの相談員と積極的に交流することになった。この他、組織の拡大強化、新規相談者調査用紙等を議論した。




借地の明渡しで頑張る
板橋区仲宿の中野さん

地代未納で契約解除
地主、半年払いと知らず勘違い

中野さんが借地している板橋仲宿附近
中野さんが借地している
板橋仲宿附近

 板橋区仲宿で借地していた中野さんは、高齢で老人ホームに入居することにした。代わりに息子さんがこの借地について管理することにした。息子さんは、実の母親と妻の実家の母親の入院騒ぎで、地代の支払いが今年の1月から支払われていなかった。地主本人も体調不良で入院となり、その息子が管理者となった。その息子が5月になっていきなり5ヵ月分の地代が未納で契約書第5条1項に記載されている3か月分以上の賃料の支払いを怠ったときに抵触するので契約を解除すると電話で通知してきた。あわてて地主のところに6か月分の地代を支払いにいったが、地主は強行に未払いを主張し、契約を解除し明け渡しを求め、地代の受領を拒否してきた。
 中野さんはインターネットで検索し、組合事務所に尋ねてきた。相談では、とりあえず供託し様子を見ることにしようとアドバイス。翌日、土地の登記簿などを持参し相談していたところ、地代の納入帳を調べたところ地主の母親と借地人との間で、半年に一度地代を支払うことで合意していたことが判明した。当事者双方の母親の具合が悪くなり、そのような事実について知らなく、契約書通りの支払い方法だと錯覚していたものと考えられた。地主宛に「支払い方法の合意に貸主の錯誤があり、地代の未払いはないこと。受領を拒否したので供託する」と言う通知と供託を同時に行うことにした。中野さんは、借地上の建物の処分も含め、組合に入会して相談していくことにした。




 

借地に地主が車を駐車
荒川区

氏倉さんの玄関左に駐車する地主の車
氏倉さんの玄関左に
駐車する地主の車

 荒川区南千住6丁目で昭和45年から11・5坪の借地をしている氏倉雅子さんは、平成12年頃地主から一時借地内に車を置かせてくれと頼まれて一時使用料として5万円を受け取り承諾した。しかし、その後、1年が経過しても地主は車を移動せずに時々使用するのみであった。氏倉さんは車が駐車している所は以前から洗濯物を干していた場所である。地主は、氏倉さんが80近い高齢者であり、すでにご主人を亡くしている事もあって勝手に鉄骨を立てその上に簡単な物干場を作りそこを利用するようにと言ってきた。氏倉さんは、最初に5万円を受け取ったため、しばらく我慢をしていたが、坪1086円の地代も払っているのにその上に7年間も無料で駐車を認める訳にはいかないと地主に申し出た。
 地主は、今年9月が更新だからその時は更新料を安くしてあげる等々といって全く話し合いにならなかった。氏倉さんは組合に相談して入会し、車を地主が撤去するまで更新料は支払う意思のないことを申し出る決意である。




【借地借家相談室】

坪10万円の更新料の
支払請求を受けているが
支払わないとどうなるのか

(問)今年の7月で20年間の借地契約期間が満了する。地主は近所の不動産屋を通じて更新料を坪10万円、34坪で総額340万円請求してきた。更新料を支払わない場合、借地契約はどうなるのか。

(答) 借地契約の更新は、(1)地主と借地人が更新契約条件に合意して、新しい契約書に署名捺印する「合意更新」があり、(2)これに対して地主と借地人との間で契約条件の合意が得られない場合でも、借地人が土地の使用を継続する場合、契約期間が満了すると法律の定めで、新しい契約書を作らなくても従前の借地の契約条件で自動的に更新してしまう「継続使用による更新」がある。また、(3)期間満了に際して地主に契約更新を拒否する正当な理由がない場合、借地人の一方的な更新請求だけで借地更新が認められる「請求による更新」との3通りの更新がある。
 (2)と(3)の更新の場合は、借地上の建物が鉄骨建などの堅固建物ならば契約期間は30年、それ以外の建物ならば20年に存続期間が法定されている。その他の契約条件は従前の契約と同一で自動に法定更新される(借地法4条1項、6条1項)。
 「借地借家法」は平成4年8月1日から施行されているが、「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による」(借地借家法附則6条)とされ、借地契約を今後何度更新しても、旧「借地法」が引き続き適用される。
 更新は地主との契約の合意がなくても法律の規定で自動的に出来るものであり、更新料を支払う根拠はない。また地主は更新料を請求する根拠として「更新料の授受は世間の慣習だ」と主張したが、最高裁判所で慣習説は否定され、借地更新料は支払義務なしとされた(最高裁判所昭和51年10月1日及び同昭和53年1月24日判決)。
 更新料を支払わなくても借地人が後に不利益を蒙ることはない。既に更新料不払の借地人は大勢おり、今も従前通り借地を続けている。更新料不払は着実に増え続けている。
 実践する場合は組合に相談し、内容証明郵便で借地の更新請求と更新料の支払請求を拒否する旨の文章を地主に送る。以上を組合の仲介で行えば一層効果的な結果が期待できる。





毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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