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東京借地借家人新聞


2008年3月15日
第492号

都営住宅新規建設を
住宅要求で都市整備局と交渉

都民の要求に背を向けるな
真面目に回答しない都の担当者批判

都市整備局と交渉する東借連役員

 東借連は、2月5日午後2時から都議会の会議室において都市整備局交渉を行なった。交渉には都市整備局から、佐藤住宅政策推進部副参事、山口都営住宅経営部企画課長等4名、東借連から佐藤会長、細谷専務理事など9名の役員が出席し、民間賃貸住宅等にかかわる7項目の要求の実現を都に要請した。
 東京都は、住宅数が世帯数を上回っている等の理由で住宅に困窮する都民の切実な要求にまじめに回答しようとせず、東借連の役員からも厳しい批判の声が上がった。
 交渉には、日本共産党の植木こうじ都議、全借連中村事務局員が列席した。

都市整備局回答(要旨)

1、「都営住宅の新規建設」
(東京都)都内においては住宅数が世帯数を上回っている。新規建設は考えていない。既存ストックの有効活用をしていく。
2、「公営住宅の入居収入基準の引下げに反対」
(東京都)平成8年当時収入分位25%に相当する世帯の収入は政令月収20万円だったが、所得の減少で現在では36%程度に当り、25%に相当する収入基準(15万8千円)に引き下げた。
3、「低額所得者への家賃補助制度の創設」
(東京都)対象者の範囲など課題が多く、住宅政策としては考えていない。東京都だけで実施すると他県から移住するので財政が困難になる。
4、「高齢者等への入居差別の禁止、公的保証人制度の創設」
(東京都)高齢者の円滑な入居に向けて、「あんしん入居制度」の普及を図っている。高齢者等の入居を拒まない民間賃貸住宅の供給を促進する。
5、「保証委託契約書の実態調査と規制」
(東京都)消費者契約法に照らすと問題がある。保証会社に対し宅建業法では規制できない。業界でつくる賃貸保証制度協議会の自主規制の動きを見守っていく。
6、「悪質不動産業者の指導強化、管理業に関する業法の見直し」
(東京都)更新手数料や原状回復等についての苦情あるが、不動産業の管理業務は規制できない。不当な行為に対しては、個別の相談と業界等を通じて注意を喚起し、講習を通じ業務の適正化をはかっている。管理業務については国の研究会で報告書が出されている。
7、「賃貸トラブルガイドラインの徹底」
(東京都)都のガイドラインはパンフレットで普及させている。




権利のある借主に公開
課税台帳閲覧問題で総務省と懇談

説明する全借連船越副会長

 東京都主税局が固定資産税課税台帳の閲覧・証明書に関して、契約書がなく供託書のみの提示では、借地借家人であると確認できないとする見解を発表した。東借連では昨年11月1日に主税局交渉を行い、主税局に回答を求めていた件で1月に主税局より総務省に照会した結果の報告があった。
 全借連と東借連では、2月22日午後1時30分から総務省が東京都に回答した問題について懇談を行なった。総務省自治税務局固定資産税課より小池信之理事官、山中日出男企画係長等が出席した。
 懇談の中で、借地借家人に対して課税台帳は原則公開することが確認され、契約が切れている場合に何を持って権利のある賃借人であるかどうか確認できるかが問題となった。総務省は「真の賃借人であるかの立証責任は借地借家人の側ではなく税務当局にある」と答弁し、東京都は契約書のあるなしだけで形式的に判断していると指摘し、権利のある借地借家人には公開しなければいけないと強調した。
 なお、都税事務所の窓口で契約が法定更新している場合には権利がないとする対応は誤りであると明確に回答した。




借地更新料で頑張った
大田区本羽田の新谷さん

不況で更新料支払困難
地代を供託し法定更新に

 

大田区本羽田1丁目の新谷鉄鋼所

 大田区本羽田1丁目に宅地231平方メートルを賃借して、鉄鋼関係の工場を営み親から相続で権利を継承した新谷さん兄弟は、地主から高額な更新料を請求された。
 この地区は戦後日本の高度成長を支えた京浜工業地帯だが、今では長期不況の影響を諸に受けて、工場跡地に高層マンションが立ち並ぶ住宅地域に変わりつつある。 このような変化もあってか、請求される更新料は高額だ。
新谷さんは昨年請求された際、更新料の支払いは経済的に困難と回答し、地代の受領を拒否されれば供託する旨を伝えた。しかし、地主代理人弁護士から、更新料の協議不調の上、地代が滞納していると指摘され、土地を明渡すなら賃借権を買い取ると通告された。
直ちに、新谷さんは、これまで地主が6ヵ月分毎に地代を集金していたことを指摘し、地代滞納の事実はないこと。すでに提供した地代が返金され、受領拒否が確認できたので供託することを決断。さらに、契約更新時に借地上に建物が現存していることを主張し、賃貸借契約の更新請求を内容証明郵便で行った。すでに契約は法定更新されて今日に至っている。
 新谷さん兄弟は、地代を供託し、契約の更新請求したことで、落ち着いて仕事が出来ると笑顔を取戻した。



 

店舗の家賃減額に成功

台東区

 台東区上野3丁目で飲食店を経営している高田さんは、借地借家人組合に加入し、何とか家賃の値下げが出来ないものか相談した。
 高田さんが店舗を借りたのは、昭和61年の4月であった。契約期間は5年、賃料は約10坪で月額20万円だった。
 バブル景気に沸く、平成3年の契約更新時に、重大な書換えが行われ、契約期間は3年に短縮され、家賃は一気に月額25万円になった。新たに償却特約が加わり保証金から3年で家賃の2カ月分が償却される。不足分を補充するので実質上は更新料である。
 高田さんは、毎月末日に指定された銀行に家賃を振込むことになっている。しかし、組合と相談し今回は敢えて振込みを停止し、1月に家主宛に家賃の減額請求を内容証明郵便で通知した。
 翌月、家主の事務室に組合役員と出向いて家賃の減額交渉をした。家主はその場で5万円の値下げに同意した。
 今回の結論、家賃の減額請求は無理だと諦めずに取敢えず遣ってみるということだ。




【借地借家相談室】

借地権を売却したいのだが無断譲渡だと
言って地主は承諾してくれない

(問)借地上建物の売却を不動産業者に依頼し、売買契約書を作成し、手付金の授受及び所有権の移転の仮登記も終了している。しかし地主は無断譲渡を理由に、土地明渡を通告して来た。

(答)建物を譲渡する場合、借地権の譲渡について予め地主の承諾を必要とする(民法62条1項)。
 承諾を得ずに借地権を譲渡すると地主は、無断譲渡を理由に借地契約を解除することが出来る(民法612条2項)。契約が解除されると借地人は地上建物を収去し、土地を明渡さなければならない。
 また地主が契約を解除しない場合でも、譲受人は無断譲渡ということで借地権の取得を地主に対抗出来ない。従って、譲受人は土地を不法占拠していることになり、地主から直接建物収去・土地明渡の裁判を申立てられることもある。明渡請求に対して譲受人は地主に建物買取請求権を行使することが出来る(借地借家法14条)。しかし建物買取価格は借地権価格の20〜30%位であり、最終的に譲受人は金銭的損害を蒙ることになる。
 このようなトラブルを回避するためにも、地主の承諾に代わる許可を裁判所に申立てて譲渡代諾許可を受けておく必要がある(借地借家法19条)。
 申立の時期は「譲渡」の前になされなければならない。
 譲渡とは建物の所有権の移転の本登記又は引渡を受けて土地を使用する状態と解されている。売買契約を既に締結している場合でもその履行前に申立をしないと「不適切な申立」として却下される。
 相談者は仮登記の状態なので未だ代諾許可の裁判の申立は出来る。この申立をすると裁判所が借地条件の変更や財産上の給付を条件に地主に代わって譲渡の許可をする。その場合譲渡許可の承諾料は、特段の事情が無ければ借地権価格の10%を基準額としている。残存期間が5年以下の場合は基準額より2〜4%程度増額される。
 但し申立をする場合、譲渡する「第三者」は特定されていなければならない。また地主は「第三者」に優先して買受ける権利を有している。
 尚、許可後の6ヶ月以内に建物を譲渡しないと効力は失われる。

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毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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