過去のページ
東京借地借家人新聞


2007年9月15日
第486号

東借連夏季研修会開催

借地借家の相談事例を解説
連帯保証人の責任、貸主の破産等17問で


東借連2007年度夏季研修会で
挨拶する佐藤会長

 東借連は、「2007年度夏季研修会」を9月1日午後1時30分から豊島区生活産業プラザにおいて開催した。都内各組合と全借連・千葉県連から合計35名の組合役員と組合員が参加した。
 研修会の司会は生駒理事(荒川借組事務局長)が担当した。開会に当り、主催者を代表して佐藤富美男東借連会長が挨拶した。
 佐藤会長は「7月に行なわれた参議院選挙で自民・公明両党が参議院で過半数は失うという新しい政治情勢を迎え、借地借家法の改正問題も今後どうなるか予断を許さない状況にある。今後は国民の一つの一つの声が試金石となって政党の対応が問われていく時代となる。組合を大きくするために相談に対応できるよう、しっかりと勉強していこう」と訴えた。
 研修会では、日頃組合に持ち込まれる17の相談事例について参加者が回答を選び、講師の東借連常任弁護団の田見高秀弁護士が正解を説明する形式で行なわれた。相談事例は、(1)借家人の連帯保証人の責任、(2)更新手続きを仲介した業者の明渡し請求、(3)貸店舗の退去時の保証金の償却、(4)火災と借地上の建物の修理と増改築、(5)借家の火災、(6)借地の契約面積と実測面積の違い、(7)立退料と正当事由、(8)地主の相続人と正当事由、(9)立退料の残金の未納、(10)マンションの会社契約からの変更、(11)告知されなかった前入居者の死亡、(12)賃貸人の破産、(13)借家人の破産、(14)地主の死亡と地代の支払先、(15)店舗の定期借家契約への切替、(16)借地人の名義変更と対抗力、(17)連帯保証人に代わる賃貸保証委託契約の解除以上17問。

田見弁護士が相談事例解説


解説する田見高秀弁護士

 相談事例は日頃各組合で相談を受けている問題で、講師の田見弁護士より、過去の判例や法律が改正された点などが分かりやすく解説された。とくに、賃借人の契約と抵当権の設定の時期については「どちらが早いか」で決まってしまうこと、借地人の対抗力としての登記名義については借地人以外の名義にむやみに変更すると危険であること等が説明された。
 また、地主が死亡した後の地代の支払い方法については、平成17年の最高裁判決で「遺産分割未了の共有不動産の賃料債権は各相続人の単独債権とした」ことから相続人不確定で地代を供託することが無難となったことなどが説明された。質疑では、正当事由や更新料、耐震補強工事と増改築、貸主に落ち度のある滞納賃料の保証人への請求等について質問が出た。最後に、野内副会長の閉会の挨拶で午後4時に研修会を終了した。




借地セミナー大盛況
個別相談で地上げ問題も


講演する細谷専務理事

 生活協同組合・消費者住宅センターは、8月25日午後1時30分から「借地問題セミナー」を中野区の東京都生協連会館3階において73組92名の参加で開催した。
 講演は、「借地借家法の基礎知識」と題して、東借連の細谷専務理事が1時間にわたり説明。細谷専務理事は、パワーポイントを使って、借地借家法の沿革、既存の借地関係への適用の有無、借地契約の更新と終了の有無等について説明した。次に、事例研究報告として住宅生協の久保峰雄理事長より「上手な借地の利用」について説明がされた。
 セミナー終了後の個別相談では、地上げ事件がらみの深刻な相談が目立った。




更新料で頑張ってる
豊島区北大塚の斉藤さん

20年前バブル時と同額請求
地主は前回の支払いが合意と強弁


斉藤さんが借地している
豊島区北大塚付近

 豊島区北大塚で借地している斉藤さんは、20年前の更新時に地主の代理人である弁護士から一千万円の更新料を請求された。斉藤さん、慌てて弁護士を代理人に立て交渉したが、よくわからないままに結局五百数十万円を支払った。
今年、更新の時期を迎え、また地主の代理人は「更新手続きと前回と同じ更新料の支払い。公租公課、諸物価の値上がりを理由とした地代のおおよそ二倍とする値上げ」を通知してきた。びっくりして、以前知人から「借地問題で困ったことがあったら相談するよう」話を聞いていた借地借家人組合にやってきた。
  組合では「契約書に更新料支払いの約束がないこと。20年前のバブルの頃と同じ更新料を請求していること」等を指摘し、「更新料では、最高裁判例では支払い義務がないこと。また、更新料の算出根拠を示すこと。地代の値上げの根拠となる公租公課の開示を求める」通知書をだした。
弁護士からの回答が一ヶ月過ぎてきたが、更新料については法的根拠については示すことなく前回更新料を支払ったことが今回の合意であると強弁して来た。また、更新料の算出根拠や地代の値上げの根拠とした公租公課については回答すら出来なかった。斉藤さんは「ここまできたら、あくまで支払わないでがんばる」と語った。


 

明渡しの契約書を強要

大田区


斉藤さんが借地している
豊島区北大塚付近

 大田区南雪谷一丁目に居住する新井さんは、木造瓦葺平屋一戸建床面積13・58坪を賃借し家賃は月額6万円である。また、隣接する木造トタン一部瓦葺二階建居宅一戸建床面積23・5坪を賃借の津田さんは、家主の承諾を得て二階部分を自らの費用で増築したので家賃は同額とのこと。居住する建物は古く老朽化との理由で、今年6月末日の期間満了の契約更新に当り、2年の期間で明渡すとの約定を記載した契約書に署名捺印を強要され、知人に組合を紹介されて相談に来た。
  長年居住しているので古い建物ではあるが朽廃の状況ではなく、日常生活に充分耐えられるということなので、家主にそのことを伝えて明渡し拒否の通告をした。家主の対応は、明渡しの約定を撤回せずに2倍の家賃を求める厚かましさ。受領拒否の家賃を供託して、新井さんと津田さんは「建物が耐える限り頑張ります」と決意している。




【借地借家相談室】

調停で支払い約束をした更新料は法定
更新した後でも支払い義務があるのか

(問)3年前に、更新料を支払って、法定更新をした。それにも拘らず、家主は弁護士を使って更新料の支払を要求する。簡易裁判所の調停で、家賃の一ヵ月分の更新料を支払うという条項があり、それを根拠に支払えというのだ。

(答)法定更新は、「適法な更新拒絶の通知、条件変更の通知、および正当事由の立証は賃貸人がしなければならず、この立証がないかぎり賃貸借は法律上当然に更新される」(東京高裁1956年1月30日判決)。
  家主は法定通知期間(契約満了の1年前から6か月前)に適法な更新拒絶・条件変更の通知を行っていない。相談者の借家契約は、借地借家法26条1項の規定に基づいて適法に、従前の契約と同一の条件で3年前に法定更新されている。
 法定更新後の借家契約の契約期間は26条の但し書により「定めがないものとする」ということになる。従前の3年契約のように契約に期間を区切って更新を繰返す契約ではないので、法定更新すれば以後契約の更新という事態は生じない。更新は法的に発生しないから更新料の支払い問題は発生する余地はない。
 関係する判例を挙げると、(1)「賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習は、存在しない」(最高裁1976年10月1日判決)。
(2)「建物賃貸借契約における更新料支払の約定は、特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意更新される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではないと認めるべきであるとするものと解される」(最高裁1982年4月15日判決)。
(3)更新前の調停・和解の効力は、「更新された賃貸借は旧契約とは別個のものだから更新前の調停・和解の執行力は新賃貸借には及ばない。」(広島地裁1966年6月6日判決、大阪地裁1971年6月26日判決)。
 相談者が簡裁で合意した調停条項の「更新料として新賃料の1か月分を支払う」という調停の効力は、法定更新された契約には及ばないことは勿論のことである。以上のことから、家主の更新料支払い請求は理由がない。相談者は家主の不当な更新料支払請求を拒否することが出来る。




毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

 ← インデックスへ