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東京借地借家人新聞


2007年8月15日
第485号

住宅会議がセミナー開催
7月28・29日 八ヶ岳の長野県原村で

なぜ起こる居住の貧困
マンション破綻、ネットカフェ難民等


原村で開催されたサマーセミナー

 第23回日本住宅会議サマーセミナーが、7月28日・29日の1泊2日で八ヶ岳中央高原・グリーンプラザホテルで、学者・建築家・研究者・住まい連加盟団体の代表、学生など50名が参加して開催された。
 セミナーは、第1日目が特別講演「地域再生と小さくても輝く自治体づくり」と題して、長野県阿智村岡庭一雄村長が講演。現在進められている小規模町村の合併に反対して「一人ひとりの住民が輝く自治体づくり」に向けて、「村づくり委員会」など協働の村づくり活動が紹介された。
 パネルディスカッションでは、セミナー会場地元原村や富士見町の議員等による地域再生に向けた街づくりの取組みが報告された。
 第2日目は、「現代の居住貧困とコミュニティ」をテーマに、高崎健康福祉大学の松本恭治教授、全国公営住宅協議会の荻田武会長、大正管理組合の小澤忠二元理事長、首都大学建築学科学生の浜田昌則氏より、居住貧困の実態について報告がされ、活発な討論がされた。地方の交通の便の悪いマンションは、居住者の高齢化によって、建替えもできず、競売価格5万円のマンションも出てくるなどマンション破綻の実態が明らかにされた。若者の居住貧困では、「就労環境が不安定なため、アパートを借りてもいつ家賃をはらえなくなるかわからない」との報告がされ、ネット共同で居住する入居者を募集するルームシェアという居住形態が紹介された。
 また、住生活基本計画の問題点と住宅運動について、新建築家技術者集団の鎌田一夫氏、住まい連代表幹事の坂庭国晴氏より報告と討論がされ、2日間の日程を終了した。




生協・消費者住宅センター
借地権活用セミナー


講演する細谷専務理事

 生活協同組合・消費者住宅センターは、東借連後援で「借地借家問題セミナー〜借地権-財産価値と活用法」を次の日程で開催する。

日時 8月25日(土)
時間 午後1時30分〜4時
会場 東京都生協連会館3F(JR中野駅徒歩6分、丸の内線新中野徒歩7分)
講師 細谷紫朗(東京借地借家人組合連合会専務理事)久保峰雄(生活・消費者住宅センター理事長)
内容 (1)借地借家法の解説
(2)借地の財産価値と活用法
参加費 千円(1組2名様まで、小冊子1冊含む)
締切 8月24日(金)
問合せ 生協・消費者住宅センター電話03-5340-0620(担当高坂)
当日、東借連役員と住宅生協の役職員がセミナー終了後、個別相談に応じる。





2007年度東借連夏季研修会


日 時 9月1日(土)午後1時30分〜4時
会 場 豊島区生活産業プラザ6階・研修室
     (JR、地下鉄等池袋駅東口下車徒歩7分)
講 師 東借連常任弁護団 田見高秀弁護士
定 員 40名(参加無料)
テーマ 「借地借家の相談事例の研修」
申 込 8月27日までに東借連本部まで
主 催 東京借地借家人組合連合会
     電話 03(3982)7277
     FAX03(3982)7659




建物老朽化で明渡し
大田区南蒲田の當間さん

家主の解除請求は権利濫用
家主詫びて明渡しの補償条件で合意

 大田区南蒲田二丁目所在の鉄筋コンクリート造陸屋根三階建店舗兼居宅一棟の内、階下店舗部分23・8u(7・2坪)を賃借している當間さんは娘さんの協力を得てペットショプを営んできた。昨年3月に同年4月1日より平成21年3月末日限りとする、3年期限の賃貸借更新の契約書を公証役場で締結した。それから1年2ヶ月経過した今年の6月に、家主(不動産管理業者)が建物の老朽化と防犯防災等を理由に、今年の12月末までに明渡すよう通告してきた。家主の事務所に呼ばれた當間さんは、保証金二百万円の返還に移転先の物件のチラシを押し付けられた。困った當間さんは、業者団体等に相談し組合を紹介された。
 早速、當間さんは、老朽は考えられないこと。契約解除は法律上無理があること。今後の交渉は組合を通すことを通告。組合事務所を訪れた家主に対し、契約期間途中の契約解除請求は権利濫用であることを指摘する。これまでの無理強いを侘びて条件を撤回した家主は、土地建物の売却し建替え計画が進んでいるのか、組合の提示を受け入れて家賃の百十一ヶ月分を上回る補償額と保証金の返還、立退き猶予期間6カ月の条件を家主が受け入れ合意した。
 締結は想定通り本件の土地建物を購入する株式に上場する会社と行うことになった。當間さんは大変悩んだが、こんなに早く希望の内容になって嬉しいという。



 

家主が建物売却

新家主が更新拒絶の通知

文京区

 文京区本駒込のマンションの一階店舗で、小泉さんは、平成14年から美容室を営んでいた。今年に入り、家主から建物を売却したとの通知を受け、同時に新家主という人物がきた。
 新家主は自己使用のために来年の更新は拒絶する旨の通知をしてきた。心配になった小泉さんは、知人や無料の法律相談会など、いろいろなところに相談したが不安を解消できなかった。インターネットで検索したところ、城北借地借家人組合が西武百貨店で無料の借地借家なんでも相談会をやっていることを知って相談に来た。借地借家法では更新を拒絶、契約を解除するには「正当な事由」がなければならないこと、その点で、今回のこの新家主の主張は、到底「正当な事由」にならないとの説明を受けた。
 小泉さんは「説明を聞いて安心しました。今後のこともあるので組合に入会します」と語った。




【借地借家相談室】

底地に抵当権が設定された後に建物
を建替えたが買受人に対抗できるか

(問)7年前、地主の建替えの承諾を得て借地上の木造建物を取壊し、鉄骨4階建ての建物へ建替え、登記も済ませた。ところが建替えの3年前に地主は土地に抵当権をつけていた。その抵当権が実行され、第三者が競落した。その買受人が借地の明渡しを要求している。勿論、木造建物の時も保存登記はしていた。

(答)「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することが出来る。」(借地借家10条)と規定し、建物登記がある場合に、借地権に対抗力を認め、これにより借地権の保護が図られている。
 今回の質問と殆ど同一の問題で争われた東京高裁の判決(2000年5月11日)がある。この判決は最高裁でも支持され判例として確立された。
 判決の要旨は、(1)不動産競売において対抗問題が生じるのは、抵当権設定時であって、不動産競売の買受人への売却時ではない。従って、不動産の競落時における対抗要件の存在は必要ではない。(2)抵当権に対する借地権の対抗要件があるかどうかは、抵当権設定時に登記があったか否かだけで定まる。抵当権設定後の建物の存在や登記の存在は、抵当権に対する対抗力の存否とは無関係である。建物が滅失、或は登記が抹消されても、買受人に対する借地権の対抗力は消滅しない。即ち、借地権の対抗力の有無は、競売時ではなく、抵当権設定時点で決定される。
 結論、質問者は木造建物を保存登記していたので、抵当権が設定された時点で借地権の対抗力がある。従って買受人の明渡し要求に応ずる必要はない。買受人を貸主として従前の契約内容で借地を続けることが出来る。
 従来の判例では、抵当権が設定された借地での建替えは大変危険なものであった。後日、抵当権が実行された場合、借地人は建物を取壊し、借地を明渡さざるを得なかった。
 東京高裁の判決が確定したことから、借地上建物の登記が先であれば、借地に抵当権が設定されていても建物の大幅な増改築が可能になったということだ。
 借地人にとっては刮目に値する判決である。




毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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