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東京借地借家人新聞


2007年5月15日
第482号

法改悪の情勢を論議

借地借家法改悪反対全国連絡会

公共住宅で加速する定借契約
民間では借地借家法改悪先取りの動きが


借地借家法改悪反対全国連絡会
第3回打合せ会

 借地借家法改悪反対全国連絡会は、4月4日午後3時から公社自治協で全借連、全国公団自治協、全国公社自治協、全国公住協、自由法曹団の5団体から9名が参加して、第3回打合せ会を開催した。
 はじめに、定期借家制度等をめぐる各団体からの近況が報告された。全国公団自治協からは、昨年12月の規制改革・民間開放推進会議で都市機構の賃貸住宅(旧公団住宅)の削減とともに建替え予定の団地以外にも定期借家契約を全面的導入すべきとの答申が出された。全国公社自治協からは、家賃改定が3年毎に近傍同種家賃を名目に値上げが強行されている。定期借家契約は建替え予定団地で導入され、建替えの1年前に期間満了で契約が終了し、再入居させないようにしている。全国公住協では、公営住宅の継承が配偶者以外に認めない(障害者の子供は二級まで)措置が東京都などで取られ、同居している子供が追い立てられる事態を招き、居住者の動揺がおきている。
 全借連からは、2月末に厚労省が雇用促進住宅(炭鉱などの閉山で転職し入居している住宅)の廃止を決定し、35万人の入居者が追い出されようとしている。普通借家契約から定期借家契約への切替を求められる問題が起きているなど借地借家法改悪の先取りの動きがある。定期借家契約の特約条項で「定期建物賃貸借(2年間、再契約相談)」となっていたが、再契約されることなく2年契約の満了で借家人は追い出されている。定期借家契約については借主に十分な知識がないために、問題が起きている。
 国会の情勢については、参議院選挙前で重要法案が目白押しで、議員立法の上程の動きは今のところないが引続き警戒することを確認した。今後の運動として、宣伝物としてリーフを5千部ほど作成し、地方議会への陳情を5月に実施することを確認した。




今秋に都市整備局交渉実施;東借連

5月26日熊野前商店街で街頭宣伝

東借連第3回理事会

 東借連第3回理事会が4月24日午後6時30分から東借連新事務所において9名の理事の参加で開催された。
 理事会は、はじめに新理事となった足立借組の大島昇氏より自己紹介がされた。この間の活動報告と3月の収支報告、拡大集計報告がされ、討議事項を議論した。
 東京都都市整備局の07年度予算要求の回答については不十分な内容で、今秋に不動産業課に対する要求を中心に対都交渉を実施することを確認した。悪質な契約書など事例を各組合で収集し、契約時の保証人に添付を義務付けている収入証明等についても賃貸住宅を借りにくくさせている問題等が指摘された。
 東京住宅連が6月2日に開催する公共住宅問題のシンポジウムには、東借連から3名以上参加する。日本住宅会議の7月28日・29日のサマーセミナーに東借連として代表を派遣することを確認した。
 組織財政部会は、まだ選出していない組合に要請し、第1回の部会を6月11日に開催することを決定。借地借家法改悪反対運動では、5月26日正午から午後1時まで、荒川区の熊野前商店街において実施すること等を確認した。




保証金返還で頑張る
豊島区要町の宮元さん

法定更新でも更新料差引く
調停申立で希望通りの条件で和解

豊島区要町 東京メトロ要町駅附近

 豊島区要町で十数年、美容室を営業していた宮元さんは、昨年、10月をもって営業を終了して明渡すことにした。
 宮元さんは、この家主と賃料の値上げ、値下げ問題などでトラブルとなり、相談していた民商の役員から紹介され組合に入会した。この店舗では、他にも更新時の更新料や手数料の問題、階上からの水漏れ問題後の対処問題等々でトラブルが続発していた。
 4年前の更新時には、何回か話し合いをもったが、合意更新ができずに法定更新となった。その後、2年前には、家主の代理人の弁護士から更新料支払いの内容証明書が送られてきた。宮元さんは、組合と相談して、法定更新中で更新料の支払いには応じない旨の回答をした。
 明渡しの為の原状回復の工事を最終的には家主と不動産屋も立会い確認した。しかし、明渡し後も理由にならない理由をつけて、保証金の返還を渋ってきた。
 今年に入り、保証金返還の督促をしたところ「2年前の更新料が支払われていないので、保証金から差引くといってきた」ので調停にかけた。答弁書の中でも同様の主張をしたが、調停委員からも家主の主張は無理があることを指摘され、宮元さんのほぼ希望通りの条件で和解となった。
 組合事務所に電話をしてきた宮元さん「組合に入会していたおかげでここまで出来ました。一人ではとても出来ませんでした」と話した。




調停一回で地主取下げ

荒川区

荒川区東日暮里2丁目の熊倉さん宅

 荒川区東日暮里2丁目で、60年前父親の代から36坪を借地している熊倉さんは、父親亡き後、借地権を相続し昨年11月22日に20年の期間満了を迎えた。
 更新の条件として、地主は月額4万100円の地代を12月から6900円値上げして4万7000円に、更新料は247万4850円を支払えと通告してきた。困った熊倉さんは、組合に入会し、地税を計算した。その結果、6900円の値上げには応じないが、4500円の値上げを認める。更新料は支払う法的根拠は全くないと内容証明郵便で回答した。
 地主から文書が届き、一部値上げを認めたことのお礼と更新料を1割値引きするから支払って欲しいとの内容だった。熊倉さんは、この請求も拒否したところ、地主は3ヵ月後に二人の弁護士名で代理人を立て、地代増額と更新料請求の調停を申立ててきた。
 熊倉さんは調停の場でもきっぱり請求を断った。調停官も地主の要求には必ずしも応じなくてもよいと助言があった。2回目の調停が4月11日となっていたが、4月6日に地主側が調停を取り下げ、出頭しなくてよいと通知があり、熊倉さんは一安心した。




【借地借家相談室】

借地上の建物が火災による消失で滅
失した場合の掲示と借地権の対抗力

(問)隣家の火災の類焼で借地上の建物が全焼してしまった。再築計画はあるが、現在は更地状態になっている。こんな状態の中、地主が土地を売却すると買受人に借地権を主張出来ないと聴いたが、それは本当なのか。借地権を守る手段があったら教えてもらいたい。

(答)建物が火災で消失しても、地震で倒潰しても、建替えのために自らが取壊しても原因は何であれ、建物が無くなることを「滅失」という。
 借地借家法第10条1項に「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。」と規定されている。
 従って借地権者が借地上の建物を登記しておけば、土地の所有者が代わっても新所有者に対し自分の借地権を主張出来る。また借地の明渡しを求められることもない。しかし建物が滅失した場合は、原則として第三者に対抗出来ない。
 しかし借地借家法は例外規定として10条2項を新設し、借地権を保護している。10条2項に「前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。」と規定している。  
 従って借地上の建物が火災で滅失した場合、登記事項を記載した掲示物を設置し、借地上の見やすい場所に掲示しておけば借地権は守られる。その場合、借地権は登記済み建物が存在していた時と同様に第三者に2年間は対抗出来ることになる。滅失した日から2年以内に建物を再築し、新たに登記を済ませておけば、第三者に対して2年経過後も借地権の対抗力を維持することが出来る。
 なお滅失建物が未登記だった場合は10条2項の適用は認められない。また、設置掲示物が何者かに持ち去られた場合、その後に土地を取得した第三者には対抗出来ないので注意が必要である(東京地裁平成12年4月14日判決)。




毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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