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東京借地借家人新聞


2007年2月15日
第479号

借地借家法改悪反対運動の強化に向け
全国連絡会を再開

草の根から反対運動を幅広い団体・個人への参加を訴える

1月23日に、中野区の公社自治協で借地借家法改悪反対全国連絡会が開かれた。
 全借連が事務局団体となって、公営住宅協議会、公団自治会協議会、公社自治会協議会、自由法曹団などが参加した。冒頭、全借連の河岸会長が挨拶し、船越全借連副会長が借地借家法の改悪について情勢報告がなされた。その中で、昨年末の規制改革・民間開放推進会議の答申で「定期借家制度」と「正当事由の見直し」については「平成18年度以降逐次実施」と提言。もはや検討の時期から実施の時期に来ているとし、借地借家法改悪反対運動を全力をあげて取り組むことを提案した。そのためにこの連絡会を再開することを提案した。
 各団体の取組みでは、公団から「建替え団地では、新しく募集する入居者については、定期借家制度が導入されている」との報告があり、公社でも「同様の制度が導入されていること。また、家賃の改定をおおむね三年毎としていた協定を削除し、必ず三年毎に家賃の値上げを請求されるようになった」と報告された。公営住宅でも「入居基準の見直しで、全国で31万世帯の人に影響がある」という報告がされ、住まいをめぐる情勢が厳しくなっていることが報告された。
 最後に「草の根から反対運動を強めること。連絡会の再開を確認し、幅広い団体個人に参加を呼びかけること。著名人などとも協力し借地借家法改悪反対のアピールを出すこと。法務省に法律改正の動きなどについて会談を申し入れること」などが確認された。




立退料を正当事由の要件に

民間開放推進会議が第3次答申

 06年12月25日、規制改革・民間開放推進会議が取り纏めた「第3次答申」によると、
(1)「定期借家制度の見直しについて」は、現行法では居住用建物については当事者が合意した場合でも、定期借家への切替えは禁止されている。そこで、検討事項として「(1)居住用建物について、当事者が合意した場合には定期借家権への切替えを認めること(2)定期借家契約締結の際の書面による説明義務の廃止、(3)居住用定期借家契約に関して借主からの解約権(強行規定)の任意規定化(4)賃貸人及び賃借人が合意すれば更新手続だけで契約を延長できる更新型借家契約制度の創設及びその際に契約を公正証書によらずとも締結可能にすること」
(2)「正当事由制度の在り方の見直しに関して」も、「(1)建物の使用目的、建替えや再開発等の事情を適切に反映した客観的な要件とすること、(2)立退き料を正当事由の要件として位置づけること及びその客観的な算定基準を明確にすること」以上、法改正の議論があることを踏まえ、所管省庁は関係省庁と連携し、論点の整理、具体的な策定に資する情報提供を積極的に行うべきであると答申している。
 「第3次答申」は先に日経連が政府へ提出した「2006年度日本経団連規制改革要望」と同趣旨のものである。但し日経連の方が直接的で具体的である。例えば正当事由に関しては、原則として廃止すべきとしている。仮に存続させる場合は、具体的な立退料の上限を設定すべきとしている。家賃を算定基準にし店舗等は3年、事務所等は2年、居住用は1年の家賃分を立退料として支払うとしている。




敷金で頑張った
板橋区南町の坂本さん

家主が百万円の修理代請求
敷金返還訴訟で納得のいく解決

 板橋区南町で倉庫を借りていた坂本さんは、昨年九月に建物を明渡した。近所の人の話では、当初から敷金は帰ってこないと言われており、案の定、敷金返還どころか原状回復費用として100万円を超える請求をしてきた。坂本さんは、知り合いの紹介で借地借家人組合の事務所にやってきた。組合では、原状回復費用の中には、次に入居する人のためのリフォーム代も含まれるとして、組合を窓口に話合いの場を求めることを通知した。しかし、貸主は、一度連絡をした限りで応ぜず、坂本さんは、敷金返還の訴訟の裁判をおこした。裁判の日は、貸主側は工務店の社長を証人として請求の正当性を主張したが、建設から20年近く経過していること、例え借主に原状回復の責任があるといっても経年劣化などから費用請求の100%の支払い義務はないことなどを主張した。裁判所は和解を提案し、坂本さんの主張に近い形で和解した。「組合に相談し、大変助かりました。」と坂本さんは語っていた。




明渡し調停で希望条件実る

大田区大森南

 大田区大森南2丁目所在の木造2階建工場兼共同住宅の内、階上の居宅の一部を賃借していた増渕さんは、平成12年11月家主代理人弁護士から賃貸部分は増築した箇所で、老朽化が著しく地震などの災害で倒壊する危険がある。また、他の居住者はすでに転居し、この程工場も閉鎖されたことから経済的なことも理由に明渡しを請求された。
 明渡し請求を拒否、家賃を供託して6年余の昨年3月代理人弁護士が病死し、新たに委任された弁護士からの明渡しの督促も拒否。それから6ヵ月後の昨年10月調停裁判となった。組合役員のアドバイスを受けて調停に望むことになった増渕さんは、当初は低額であったが、自らの提示した補償金家賃の約45ヶ月分に8月末までに明渡すとの条件が受入れられ合意した。




 

更新料請求の根拠回答不能

いい加減な地主代理人

豊島区

 豊島区巣鴨に住む尾崎さんは、親の代から借地していた。昨年の12月に更新を迎えた。地主の代理人という不動産会社から更新料の請求と更新に際して更新料を支払うという約定の契約書の締結を求められた。その上、更新事務手数料まで請求された。組合と相談し、更新料についてはその法的根拠、その算出根拠を求めることにした。また、更新料支払いの特約については拒否することにした。同時に更新手数料なるものは、地主の代理人であるので当然拒否することにした。
 代理人の事務所で話合いをもった時に、事務手数料問題で追求すると「根拠はありません。もらえたらもらうつもりで請求した」などとあまりにも無責任な回答であった。同様に更新料請求の法的根拠算出根拠についても回答不能となった。




【借地借家相談室】

消火活動による放水被害の損害賠償請求
をされたが払う必要はあるのか

(問)アパート2階の一室を賃借していた。食事の準備中に鍋の油に火が入り、借室の一部が焼けてしまった。その時の消火の放水で1階が水浸しになり、家財道具に被害が発生した。家主・アパート居住者から損害賠償を請求されているが、支払う必要はあるのか。

(答)一般的には故意・過失によって他人の権利を侵害した場合には、不法行為による損害賠償の責任を負う(民法709条)。しかし失火の場合は、重大な過失がない限り民法709条の規定は適用されず、民事上の損害賠償の責任を負わない(失火ノ責任ニ関スル法律)。重過失の例としては具体的には油をガスコンロにかけ、その場所を離れていたために油に引火して火災になった場合等である。
 借家人は賃借している建物をその建物の用法に従って、また善良なる管理者の注意をもって使用する義務を負っている(民法616条・400条)。これを借家人の「用法遵守義務」といい、建物を失火によって焼損させることも用法遵守義務違反で債務不履行になる。失火責任法は民法709条の適用を排除しているだけで、契約関係に基づく債務不履行には適用がない。従って借家人は失火の場合、重過失がなくても過失があれば、家主に対して用法遵守義務違反として債務不履行による損害賠償責任を負う。問題は家主が蒙った火災の損害をどの程度賠償しなければならないか。下級審の判例の多数に従うと、アパート等の「共同住宅の部屋の賃貸借において、当該賃借部屋、廊下等の部分、その他の階下の部分に対する損害についても賠償をなすべき義務がある」(東京高判1965年2月18日)として延焼部分の損害についても賠償責任を負うとされている。また家主は損害賠償の請求に消火活動によって蒙った損害も含めることが出来る。
 結論、家主の損害賠償請求を拒絶するには相談者の無過失の立証責任が必要である。これが出来ない場合は家主に対する損害賠償責任は免れられない。また相談者は重大な過失がない限り、アパートの居住者に対しては失火責任法の適用で損害賠償の責任を負わない。アパートの居住者は、家主及び相談者への損害賠償請求は出来ない。従って被害を蒙った家財は自己負担で修繕せざるを得ない。



毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可


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