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借地上の建物の利用方法が借地契約の特約に反しても特約違反に当らない

 借地契約において、特約が有効であり、文言上その違反が疑われるような場合であっても、特約違反を認めなかった事例(東京地方裁判所平成28年6月15日判決)

 本件事案では、借地人Yらが借地権付建物(2棟)を購入するにあたり、地主Xとの間で借地契約を締結し、この契約において「借地上建物は賃借人自ら住居として使用する」との特約が付されていました。そもそも、借地人Yらは、本件借地の隣地を既に地主Xから借り、そこに自宅を建てて生活をしていたのですが、自宅が手狭になったことから、借地権付建物(2棟)を購入しようと考え、新たに借地契約の締結に至りました。そのため、借地人Yらは、借地権付建物(2棟)について、1棟には家財を置き、庭でガーデニングをしたり、来客を迎えたり、テレビを見たりしてくつろいだりする家屋として使用し、もう1棟は、主として絵のアトリエとして使用していました。また、住民票も隣地上の自宅建物に登録したままでした。このような使用方法につき、地主Xは、本件借地上の建物を住居として使用することはなかったのであるから、本件特約に違反しているとして、借地契約の解除を主張しました。
 裁判所は、「建物所有のために土地の安定した利用を図るという社会目的を有する借地借家法の立法趣旨に鑑み、著しく借地権者の権利を制限するような特約は、それ自体無効というべきである。」としつつ、「本件特約は、目的物の用法として、賃借人自ら住居として使用することを定めるものであるところ、かかる特約は、著しく借地権者の権利を制限するものとはいえず、特約自体は有効である。」と判断しました。
 他方で、裁判所は、借地契約締結前から、隣地上の建物を自宅として居住しており、地主Xも、本件特約の趣旨について、借地人Yらが本件借地上建物を住所として定めたり、生活の本拠とするものではなくてもよく、借地人Yらが使用していればよいと認識していることが認められるとして、本件借地上建物の利用方法は、本件特約に反するものではないとしました。このように特約が有効で、「住居」としての利用が疑わしい場合であっても、特約の趣旨を解釈し、特約違反とならないことは十分あり得ます。地主から何らかの特約違反を主張された場合、まずは本当に違反にあたるか否か、ご相談いただければと思います。

(弁護士 穐吉慶一)