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借地権の売買契約が合意解除された場合支払済承諾料の返還求められる

 借地権の売買契約が合意解除された場合、借地権譲渡許可決定に基づき支払い済みの承諾料の返還を求めることができる(東京地裁平成29年1月25日判決)

 (事案の概要)
 借地権の譲渡について借地借家法19条1項に基づく許可決定を得た原告が、地主に311万円の承諾料を支払った後、借地権の売買契約が合意解除されたため、不当利得返還請求権に基づき地主に対し承諾料の返還を求めたところ、原告の請求が認められた事案。

 (判旨)
 被告は借地権譲渡許可決定に基づき、承諾料として311万円を受領したものであるが、借地の売買契約は既に合意解除され、借地権譲渡許可決定も確定から6か月の経過により効力を失うに至っており(借地借家法59条本文)、原告が借地権を譲渡することはもはや不可能な状況となっているのであるから、被告らがこの311万円を保持する法律上の原因も失われているとみるほかない。

 (コメント)
 借地借家法59条は、「第19条第1項(同条第7項において準用する場合を含む。)の規定による裁判は、その効力を生じた後6月以内に借地権者が建物の譲渡をしないときは、その効力を失う。ただし、この期間は、その裁判において伸長し、又は短縮することができる。」と定め、借地権譲渡許可決定は、その効力を生じた後6か月以内に借地権の譲渡がされないと原則として効力を失うと定めています。
 この判決は、この条文の規定及び承諾料は借地権承諾の対価としての性質を持つところ本件では借地売買契約の合意解除により借地権を譲渡する可能性がないことを理由に承諾料の返還を認めたものです。同種の事案の参考となる判決であると考えられます。

(弁護士 瀬川宏貴)