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無断増改築及び示威行動が理由の借地契約解除が認められなかった事例

建物の無断改築及び示威行動を理由とする借地契約の解除が認められなかった事例

 今回ご紹介するのは、私が担当した建物の無断改築及び示威行動を理由とする借地契約の解除が認められなかった裁判例(東京地方裁判所平成28年3月18日判決(判例秘書登載))です。
 本件は、地主が、賃借人に対し、(1)1年前に飲食店を事務所に変更した工事が無断改築に該当すること(無断改築)、(2)直近に隣接する地主の新築建物の外塀のコンクリート基礎をハンマーで損壊したこと(示威行動)を理由として、借地契約の解除を主張し、土地の明渡しを求めて提訴してきた事案です。
 裁判所は、地主の請求をしりぞけ、借地人勝訴の判決を出しました。まず、(1)に関しては、ミキサー車を使ってコンクリートが流し込まれた点や工事代金が300万円であったことを考慮すると、地主の承諾が必要な「改築」に当たるものの、飲食店が事務所に変更になったことで、音や臭い、煙が出ることが少なくなると推測され、周りへの影響は減るとみられるので、土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、信頼関係が破壊されていないと判断しました。
 また、(2)に関しては、警察官も臨場したことなどから、ハンマーを持ち出したことについては、非難に値することは否定できないとしつつ、コンクリートが壊れた程度が大きくないこと、借地人が関連する件で地主に対応を求めたのに地主が対応をせず借地人が不満を募らせていたことからも、非難の程度が特に高いとはいえず、信頼関係が破壊されたとはいえないと判断しました。
 地主が無断増改築や借地人の言動を理由として借地契約の解除と明渡しを求めるケースは少なくはないですが、このケースは具体的事例の1つとして参考になると思います。
 まず、増改築する場合は、地主の承諾の有無が問題となる場合が多いので、後々、口を出されないためにも、事前に組合に相談することをお勧めします。
 また、地主と感情的な対立に発展する場合もありますが、後々、不利に扱われないように、いきすぎた言動は控え、慎重な対応が必要です。地主とトラブルになりそうな場合にも、早急に組合に相談をすることをお勧めします。

(弁護士 種田和敏)