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賃料増額請求を受けた借地人は相当と判断する金額の地代を払えばよい

 地主から賃料増額請求を受けた借地人が相当と考える地代を供託していたが、その地代額が後に裁判所で確認された相当賃料より低い額だったとしても債務不履行(契約違反)とならないとした事例(最高裁平成5年2月18日判決)。

【事案の概要】
 借地人は昭和45年に本件土地を地代6760円で賃借した。地主は昭和57年に3万6052円に、昭和61年に4万8821円に、それぞれ地代増額請求をした。借地人は6760円を支払おうとしたが地主が受領を拒否したので、昭和59年6月まで6760円、昭和62年6月まで1万0140円、昭和62年7月以降2万3000円を供託した。地主は借地人が請求どおりの地代を支払わないため昭和62年7月に支払いを催告し、支払わなければ賃貸借契約を解除する旨通知したが、借地人が応じなかったため土地明け渡しを求める訴訟を提起した。1審、2審とも地主の土地明け渡し請求を認めた。

【判旨】
 2審判決取消し、地主の請求棄却。
(1)借地人が相当と考える地代を供託しているので、賃貸借契約解除の理由となる債務不履行(契約違反)はない。
(2)借地人が固定資産税等、本件土地の公租公課の額を知りながら、それを下回る額を供託している場合は、その額は著しく不相当であり債務不履行(契約違反)ともなりうる。
(3)借地人が供託した額は公租公課の額を上回っているから、本件土地の地代が隣地の地代に比べてはるかに低額であると知っていても債務不履行(契約違反)とはならない。

【寸評】
 借地借家法11条2項は地代が「近傍類似の土地の地代等に比較して不相当」となったときは地代の増額または減額請求ができると定め(減額請求しないとの特約は無効)、同条3項は増額について地主と借地人の協議が調わないときは、借地人は裁判で増額が決まるまでは「相当と認める額の地代」を払えば足りると定めている。
 本件は「相当」の判断は借地人が相当と考える額でよいとする一方、その額が公租公課を下回る額であることを知っていた場合は借地人が相当と考えていても債務不履行(契約違反)となるとしたものである。
 なお、借地人が相当と考える地代に減額請求しても、地主は相当と考える地代を請求できる(借地借家法11条3項)ので注意されたい。

(弁護士 大竹 寿幸)