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2023年9月15日 第667号


マンションの建替え決議で賃借権消滅に反対する
区分所有法改正で試案

法務省民事局令和5年7月発表資料より

 法制審議会区分所有法制部会は、2023年6月8日に「区分所有法制の改正に関する中間試案」を取りまとめ、意見募集を行っています。令和6年の通常国会に法案が提出される予定です。
 区分所有建物(マンション)の建て替えなど円滑化を図るため、建替え決議要件の緩和に加え、建替え決議がされた区分所有マンションに住む賃借権についても消滅させる案が検討されています。全借連として事務局長名で9月1日に法務省民事局宛てに次の意見を提出しました。

 法制審議会区分所有法制部会の「区分所有法制の改正に関する中間試案」の第2の1(2)の建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅について、(ア)存続期間中の賃借権の消滅、(イ)更新等に関する借地借家法の適用除外についていずれの案も以下の理由により反対する。
 現行の借家制度において、定期借家契約を除く普通借家契約において、賃貸人が契約の更新拒絶叉は解約の申し入れをするには正当事由を必要としている(借地借家法28条)。賃貸人の主張する建替えの必要性のみでは正当事由が認められないことは法文上明らかであり、区分所有建物に居住ないしは営業する賃借人に対し、建替え決議のみで正当事由を適用しないとして適用除外を認めることになれば、借家制度の根幹である正当事由制度を解体し、賃借人の居住や営業の権利を脅かすものであり、区分所有部会部会の審議で進められることに反対である。
 区分所有マンションが老朽化するに伴い、マンションに居住しないまま、賃貸で貸し出す物件が増え、建替え決議が賃借人を立ち退かせる口実に利用されることは明らかである。
 また、(ア)の存続期間中賃借権の消滅については、B案では賃借権消滅請求がされた時から4カ月もしくは6カ月が経過したときは、専有部分の賃借権が消滅するとされているが、賃借権の消滅により生ずる損失補償金支払の請求ができたとしても、賃貸借契約期間を定めた意味がなくなり、契約期間中の賃貸人からの突然の明渡しによって受ける賃借人の損害ははかり知れない。
 現在、不動産業者よる地上げ問題が多発し、借地借家法を無視して「3カ月以内に立ち退け」と脅迫する事例が後を絶たず、明渡しに応じないことで生ずる人権侵害の嫌がらせに怯えて不合理な立退き請求に応じてしまう賃借人が多いのが現実である。
 建替え決議を唯一の根拠にして、賃借人の居住する権利を一方的に奪うことは許されない。借地借家法制の賃借人の居住の権利を賃貸人及び建替えを求める区分所有者の言い分のみ認めて、賃借人の権利をないがしろにすることのないよう、立退きを求められる賃借人の事情等をより重視し、審議会において区分所有法制の慎重な審議を求めるものである。

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