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借地の一部を駐車場として貸すことが無断転貸にあたるとされた事例

 借地の一部を駐車場として第三者に賃貸したことが、無断転貸として契約の解除原因にあたるとされた事例(東京地裁平五・三・二九判決、判例タイムス八七一号二五二頁以下)
(事案)
 Y(1)、(2)、(3)は、X(1)、(2)、(3)から本件土地を賃借して、木造建物二階建居宅を所有していた。Yらが本件土地(約一二五平方m)の一部(約一五平方m)を第三者に駐車場として賃貸したところ、Xらはその中止を求めたがYらはこれに応じなかった。そこでXらはYらに対し、無断転貨を理由として賃貸借契約を解除し、建物収去土地明渡請求の訴えを提起した事案。
(判旨)
 「本件駐車場部分の面積は一五ないし一八平方メートルで一二ないし一五パーセント程度に過ぎないものであるが、AおよびBの両名との間の契約内容は、いずれも自動車一台の駐車場として賃料月額2万5000円ないし2万6000円と定めるほか、敷金、第三者への賃借権の譲渡転貸の禁止等について詳細な条項を定め、賃貸期間について一年間で合意による更新可能としている。民法六一二条が賃貸人の承諾なく賃借人が賃借権を譲渡し目的物を転貸することを禁じ、これに反して第三者に使用収益させたときは賃貸人が賃貸借契約を解除することができるものと規定している趣旨は、賃貸借が当事者の個人的信頼関係を基礎とする継続的法律関係であることにかんがみ、賃借人において賃貸人の承諾なくして第三者に賃借物を使用収益させることは契約の本質に反することから、このような行為のあったときには賃貸借関係を継続することのできない背信的行為があったものとして賃貸人において一方的に賃貸借関係を終了させることができることを規定したものというべきである。上趣旨に照らせば、第三者に住用収益をさせた対象が賃貸借の目的物である借地の一部であるからといって民法六一二条にいう『転貸』に該当しないということはできない。」
(寸評)
 本判決は「借地上に商店飲食店、劇場等の、不特定多数の顧客の来訪を伴う建物を所有ないし管理する場合」には社会通念上建物の所有又は管理目的の範囲内の利用行為と認められ転貸にあたらない場合もあり得ることを説示している。
 従って、本判決は、駐車場としての利用形態、設置目的、契約内容を総合的に判断する立場も採っている。従前の判例は、無断転貸を認めつつ、解除までは認めないものや、駐車場とする行為が用法違反にあたるとしながらも解除は認めなかったものがあり、様々である。しかし、単なる収益目的のための駐車場の設置は、転貸又は用法違反として契約解除をうけるおそれは充分にあるので注意すべきである。

(弁護士 田中英雄)

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